抄録
歯肉増殖にはさまざまな原因があるが,多くは適切な口腔清掃を行うことにより,健康な歯肉に回復することができる.しかしながら著しく増殖した歯肉においては,口腔清掃だけでは健康な歯肉に回復するのは困難である.
今回我々は,歯周外科的に歯肉切除を行った症例を経験したため報告する.症例は,15歳の男児,上下顎に歯肉増殖を認め,下顎においては,臼歯部を覆うほどに増殖していたために咬合することが困難な状態であった.患児は,生後6か月に痙攣発作を起こし抗痙攣薬を服用し始め,3歳時には乳児重症ミオクロニーてんかんと診断されていた.
著しく増殖した歯肉は,全身麻酔下にて歯周外科的に切除し,良好な術後経過を得た.本症例のような著しく増殖した歯肉に対し,外科的切除を行い咬合の回復や口腔衛生状態の改善をはかることは,患者のQOLを向上させる観点からも有用であると考えられた.