抄録
本研究は,機能運動時における舌動態の客観的評価法確立の基礎的資料を得ることを目的として,舌運動と口腔周囲筋との同時記録システムを作製し,口蓋床装着後の嚥下時における口蓋への舌圧接状態の経時的変化について検討した。舌圧接状態の観察には小型圧力センサ(共和電業社)を3か所に埋入した口蓋床を用いた。被験者は個性正常咬合を有し,嚥下障害の既往のない成人5名を用い,嚥下運動と同時に口腔周囲筋筋活動を導出した。計測は,口蓋床装着1時間後,1,2,3日後の唾液および水5,10ml嚥下時における口蓋への舌圧接状態と口腔周囲筋筋活動を測定した。
その結果,口蓋床装着後の舌圧接時間は水10ml嚥下時において測定日間変動を認めたが,その他,嚥下開始から第1,第2ピーク発現時間および最大舌圧での測定日間変動は認められなかった。また,嚥下開始を基準とした各筋筋活動開始までの時間は測定日間でも有意な差は認められなかった。これらのことから本システムによる嚥下時の舌圧接状態測定法での再現性が認められ,また経時的に嚥下時の舌運動がスムーズに行われるようになることが示唆された。