抄録
本研究は6種の酸性フッ素リン酸溶液(pH2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,5.0)によるウシエナメル質表面のアルカリ可溶性フッ化物の析出量および表層下脱灰エナメル質の再石灰化との関係を検討した。アルカリ可溶性フッ化物の析出量はAPFの酸性度の増加に伴い増加し,pH2.5のAPFが最も大きな析出量を示した。pH2.5のAPF溶液で処理されたエナメル質表面は,0.1μm以下の微細な顆粒状のフッ化カルシウムで一面が覆われていたが,APFの酸性度の低下に伴いエナメル質の表面形態は粗造化し,フッ化物の量も減少した。エナメル質の表層下脱灰層へのフッ素の拡散はAPFの酸性度の増加に伴って増加し,pH2.5のAPFでは30-40μm深さまで多量のフッ素が拡散した。エナメル質表層の石灰化度の回復率はpH2.5のAPFが最も高く,次いでpH3.5のAPFであり,最も低い回復率はコントロール(APF処理なし)であった。