小児歯科学雑誌
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機能的顎骨折治療法による小児下顎骨関節突起骨折の時系列的CT治癒経過像
篠永 ゆかり有田 憲司西川 聡美原田 桂子
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2006 年 44 巻 5 号 p. 731-739

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抄録

小児の下顎骨関節突起骨折に対する非観血的処置法として,アクチバートルを用いた機能的顎骨折治療法の治癒過程および本法の有効性を検討する目的で,本療法を施した乳歯列期の小児の下顎骨関節突起骨折症例において,初診時から継続的にエックス線CTを撮影し,CT三次元構築像により治癒経過を観察した。
患児は,初診時年齢5歳4か月の男児で,外傷による顎骨折を主訴に来科した。術前のエックス線CT像により,左側下顎骨関節突起部に3分割した骨折片を確認した。初診時,下顎骨の患側偏位および両側臼歯部に交叉咬合を認めたため,アクチバートルを17日間装着し,受傷1か月後,受傷4か月後,受傷7か月後および受傷15か月後にエックス線CTを撮影し経過観察を行った。
1.受傷1か月後に骨折片が関節突起と一体化していることを認めた。
2.受傷4か月後には,骨折片の痕跡は消失し,正常に近い関節突起の形態を呈していることを認めた。
3.受傷7か月後には,ほぼ正常な形態に治癒したことを認めた。
4.受傷15か月後には,完全に形態的治癒が完了し,顔面の形態と顎運動機能も正常であることを認めた。
5. 2年4か月間の経過観察において,後遺障害は全く認められなかった。
以上の結果より,成長期にある小児の下顎骨関節突起骨折症例において,顎骨の成長を妨げず,顎関節および周囲組織の機能を営ませながら治癒を促すアクチバートルを用いた機能的顎骨折治療法が有効であることが認められた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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