小児歯科学雑誌
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小照射野エックス線CT(3DXTM)画像診断による上顎右側逆生埋伏中切歯の治療経過
村上 由見子影山 徹大須賀 直人水島 秀元岩崎 浩宮沢 裕夫
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2006 年 44 巻 5 号 p. 720-730

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抄録
発育段階にある患児が対象となる小児歯科臨床では埋伏歯の存在により,歯列の成長,咬合機能の障害になりうることから,可及的早期に萌出を促す必要がある。しかしそれには適切な診断が必要である。逆生埋伏中切歯のエックス線画像診査はこれまでにも隣接する歯・顎骨などの硬組織が重映してしまい正確な診断が困難とされてきた。今回著者らは歯科用小照射野エックス線CT(3DXTM,モリタ製作所)画像による上顎右側逆生埋伏歯の三次元的画像診断を行い迅速に開窓および牽引へ着手することができたので報告する。
症例は7歳9か月の女児で上顎右側中切歯の萌出遅延および審美障害を主訴に来院された。逆生を起因するような全身的・局所的要因は医療面接からは認められなかった。診断より牽引後の予後不良が懸念されたが,患児と保護者が強く主訴改善を希望していたため治療を開始した。はじめにリンガルアーチを用いて1近心面と正中を一致させるようにした。治療開始3か月後に開窓を行い,同時に牽引を開始した。牽引開始3か月後には粘膜下に1埋伏歯の切縁を触知し,牽引開始5か月後には歯冠2/3の萌出が認められた。牽引開始9か月後にはほぼ歯列内に誘導されたため,1埋伏歯の唇面にブラケットをボンディングし,牽引方向を舌側から唇側に変更し,同時に21|12の配列を行った。動的治療は18か月で終了した。この間にも3DXTM画像診断を定期的に行った。現在,床型の保定装置で保定を行っている。今後,1埋伏歯の歯根吸収や,周囲歯周組織の変化を観察していくためにも3DXTM画像診断を活用した長期間の定期管理の必要性が示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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