抄録
ラバーダム防湿法は小児歯科臨床における重要な基本的術式のひとつであり,また歯科医学教育においても,モデルコアカリキュラムの小児の歯科診療の項に含まれている. ラバーダム防湿法ではまず必要な機材の準備として,ラバーダムクランプを選択することになる. 学生がどの様にクランプを認識し選択するのかを知る目的で,ラバーダムクランプを視覚素材に用いて実験を行い,以下の結論を得た.
1.測定した眼球運動からは,Targetを起点としてNo.P1クランプへ到達するまでの軌跡を3つのパターンに分類できた.
2.視線の走査方向は周辺視により決定されていると推測され,被験者の半数がTargetと特徴の類似したものから情報探索を開始し,残りの半数でTargetとは特徴の相違なものから情報探索を開始した.
3.Targetとは特徴の相違なものから消去していくような見方において停留回数,停留時間ともに多い傾向を示した.
4.クランプの再認において錯誤の生じた例はいずれも「時計回り」のパターンにおいてであった.
以上よりラバーダムクランプを再認する際に,Targetと特徴の類似したクランプに速く視線が走査する眼球運動よりも,特徴の相違なクランプから視線が走査していく眼球運動で,注意深い情報探索が行われていると示唆された.