小児歯科学雑誌
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45 巻, 1 号
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  • 第2報食品間の違い
    西田 宜弘, 中原 弘美, 齋藤 尚則, 長谷川 信乃, 田村 康夫
    2007 年 45 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,機能運動時における舌動態の客観的評価法確立の基礎的資料を得ることを目的として,食品による嚥下時の口蓋への舌圧接状態の違いについて検討を行った. 被験者は正常嚥下を行っていると判定した成人7名を用い,舌圧接状態の記録は小型圧力センサ(共和電業社)を左右中切歯歯間乳頭部(前方),正中線と左右第二小臼歯近心隣接点とを結んだ線との交点(中央)および正中線と左右第二大臼歯近心隣接点とを結んだ線との交点(後方)の3か所に埋入した口蓋床を用いた. また同時に口腔周囲筋筋活動を導出した. 嚥下開始は喉頭の前上方への上昇開始で判定し,舌圧接状態の変化を検討した.
    嚥下時の舌圧接パターンには二峰性と一峰性がみられ,第1ピークは食塊の移送のための舌の前方から後方への圧接の移動と関係し,第2ピークおよび一峰性は舌全体を口蓋に圧接して嚥下していることが考えられた.さらに食品によって舌圧接力,舌圧接持続時間に変化が認められ,口蓋への舌圧接状態や口腔周囲筋筋活動を変化させ各食品に対応していることが明らかとなった.
  • 清水 久美子, 鶴山 賢太郎
    2007 年 45 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    顎関節のMR画像検査において,上関節腔に貯留した関節液像病的な徴候であるという意見と健康な成人ボランティアの顎関節にも多く認められるとの報告もあり,MR画像検査において認められる関節液像の有無と顎関節の因子との関係は不明な点である. そこで本研究では,若年者の顎関節MR画像において認められる関節液像とその関連因子との関係について,多変量解析による検討を行った.
    対象者は,日本大学松戸歯学部付属病院小児歯科部を受診した6歳から16歳(平均年齢11.6歳)までのMR撮像が可能であった209名(男児71名,女児138名)であり,両側418関節を評価対象とした.
    外的基準変数である関節液像の評価は,T2強調画像において関節腔内にno fluidは,関節液像なしとし,minimal fluid,moderate fluid,marked fluid,extensive fluidは関節液像ありとした. その結果,関節液は418関節中,関節液像なしは349関節,関節液像ありは69関節であった.
    また,説明変数には閉口位での関節円板位置,関節円板形態,開口位における関節円板の位置,関節円板側方転位,下顎頭形態,関節隆起形態とした.
    多変量解析の結果,若年者の顎関節において,中等度から高度の関節円板前方転位や復位を伴わない関節円板前方転位などの重症の顎関節内障に加えて,変形した関節円板,急峻な関節隆起後斜面がMR画像における関節液像の出現に関与していることが示唆された.
  • 小川 京
    2007 年 45 巻 1 号 p. 16-28
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,系統間における咬耗の感受性の比較や咬耗させやすい飼料の探求,咬耗における遺伝要因の有無について検討することを目的として,C 57 BL/6およびC 3H系統マウスを性状および組成の異なる4種類の飼料(固形と粉状の標準食および高脂食)下にて飼育し,臼歯咬耗状態を比較した. 実験開始の21日齢よりそれぞれの飼料を与え,150日および240日後に各群5匹ずつ下顎をMicro-CT撮影し,咬耗面の面積を測定することによって,咬耗状態を評価した. すべての実験群において,咬耗はC 57 BL/6系統よりもC 3H系統が大きかった. 各飼料間では,粉状高脂食マウス群が最も咬耗し,系統間における感受性が明らかに異なった. またMicro-CTは解像度が高く,マウスの咬耗を評価するのに有用であると考えられた.
    以上のことから,C 57BL/6系統を咬耗低感受性マウス,C 3H系統を咬耗高感受性マウスとし,F1(8匹)およびF2(16匹)マウスを粉状高脂食下にて240日間飼育し,Micro-CT撮影を行い,咬耗面の面積を測定することで咬耗状態を評価した. 親系統の測定値より判別境界値を求め,F1およびF2マウスを咬耗高感受性と低感受性に分類したところ,F1マウスは8匹すべて咬耗低感受性であったのに対し,F2マウスは咬耗高感受性7匹,咬耗低感受性9匹に分類されたことから,咬耗に遺伝要因が強く関与することが示唆された.
  • 第4報小学生における口唇閉鎖状態との関係
    村田 宜彦, 小野 俊朗, 柴田 宗則, 青山 哲也, 坂井 志穂, 大塚 章仁, 神谷 省吾, 土屋 友幸
    2007 年 45 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは小児の口腔機能を口唇閉鎖力から調査してきた. 今回は小児期における口唇閉鎖力と日常の呼吸状態との関係を調査することを目的に,名古屋市内の小学校に通学する6歳から12歳までの児童467名(男児234名,女児233名)とその保護者を対象とし,児童に口唇閉鎖力の測定,保護者に質問紙調査を行い,以下の知見を得た.
    1.9歳未満の児童では,質問紙調査のすべての項目において,口唇閉鎖力に有意差は認められなかった.
    2.9歳以上の児童では,常に口が開いている児童の口唇閉鎖力は,有意に低い値を示した. また,口呼吸や鼻・口両方で呼吸している児童の口唇閉鎖力は有意に低い値を示した.
    これらのことから,概ね9歳までに正しい呼吸様式を習得することにより,口唇閉鎖力の向上につながり,不正咬合等の予防になると示唆された.
  • 許田 依里
    2007 年 45 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,吸啜期ラットの舌下神経核ニューロンに対する近傍領域の介在ニューロンの生理学的な特性を調べるために以下の3つの実験を行った.
    1.蛍光逆行性色素標識による舌下神経核ニューロンの特定
    2.舌下神経核ニューロンにおけるナイスタチン穿孔パッチクランプ法によるホールセル記録
    3.ホールセル記録神経細胞の形態学的観察
    その結果,
    1.冠状断にて薄切された切片から,舌下神経核が正中付近の背側寄りに類円形の領域として観察され,強拡大像にて樹状突起の発達した大型のニューロンであることを確認した.
    2,Bregmaから-13.0~-14.0mmの領域において,舌下神経核にシナプス後電位(PSP)を誘発するニューロンが多数認められた. いずれのレベルにおいてもEPSPとIPSPは混在しているのが確認されたが,EPSPのみもしくはIPSPのみ誘発された領域も存在した. 舌下神経核近傍領域から得られたPSPの潜時は,舌下神経核の吻側領域から中問領域においては短時間潜時ならびに長時間潜時も認められたが,尾側領域においては短時間潜時のみが認められた.
    3.ホールセル記録を行ったニューロンに対して,バイオサイチンによる染色を行った結果,舌下神経核ニューロンの軸索の形態は双極型,偽単極型などが存在していた. 細胞体の形態は卵円形,楕円形であるのが認められた.
  • 乳臼歯用クランプの場合
    馬場 宏俊, 下岡 正八, 田中 聖至, 本間 裕章
    2007 年 45 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ラバーダム防湿法は小児歯科臨床における重要な基本的術式のひとつであり,また歯科医学教育においても,モデルコアカリキュラムの小児の歯科診療の項に含まれている. ラバーダム防湿法ではまず必要な機材の準備として,ラバーダムクランプを選択することになる. 学生がどの様にクランプを認識し選択するのかを知る目的で,ラバーダムクランプを視覚素材に用いて実験を行い,以下の結論を得た.
    1.測定した眼球運動からは,Targetを起点としてNo.P1クランプへ到達するまでの軌跡を3つのパターンに分類できた.
    2.視線の走査方向は周辺視により決定されていると推測され,被験者の半数がTargetと特徴の類似したものから情報探索を開始し,残りの半数でTargetとは特徴の相違なものから情報探索を開始した.
    3.Targetとは特徴の相違なものから消去していくような見方において停留回数,停留時間ともに多い傾向を示した.
    4.クランプの再認において錯誤の生じた例はいずれも「時計回り」のパターンにおいてであった.
    以上よりラバーダムクランプを再認する際に,Targetと特徴の類似したクランプに速く視線が走査する眼球運動よりも,特徴の相違なクランプから視線が走査していく眼球運動で,注意深い情報探索が行われていると示唆された.
  • 1994年と2004年との比較
    今井 裕樹, 久保 周平, 藥師寺 仁, 梁 勤, 石 四箴
    2007 年 45 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1994年から上海市の幼稚園園児を対象に口腔内診査を行っており,2004年の調査結果と比較することによって上海市小児の口腔保健状況の変化を把握する目的で検討を行った. 両年とも3~5歳の小児を対象とし,1994年は男児227名,女児215名の合計442名,2004年は男児100名,女児85名,合計185名である. 乳歯の齲蝕罹患状況は,齲蝕有病者率,一人平均dft,dt,ft,dfsともに各年齢群において2004年の方が低い数値を示し,4歳および5歳では統計学的に有意な差を認めた.
    不正咬合の発現状況は1994年,2004年ともにあまり変化はなかったが,上顎前突のみやや増加傾向が認められた.
    調査対象とした幼稚園では口腔衛生学的な教育の充実により,齲蝕の減少傾向が認められ,口腔保健状況は改善傾向にあるといえる. また,不正咬合については,今後,口腔習癖の発現状況,授乳方法および期間,家庭環境などを合わせて調査し,検討する事が必要であると考える.
  • 小久江 由佳子, 猪狩 和子, 工藤 理子, 後藤 申江, 穂積 由里子, 真柳 秀昭
    2007 年 45 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年,口唇閉鎖習慣を持たない小児が増加していると言われている. また,「噛まない」「噛めない」「飲み込めない」などの摂食機能の拙劣化を疑わせる訴えも保護者,保育士などから多くきかれる. そこで,今回,口唇閉鎖獲得のために必要である口唇閉鎖力と咀嚼機能の一指標である咀嚼能力との関連性を調べる目的で,仙台市内の保育園5か所における年長児クラス(4~6歳)92名において口唇閉鎖力,咀嚼能力の測定および前歯部咬合状態の評価を行い,それぞれの関連を調べたところ,以下の結果を得た.
    1.口唇閉鎖力と咀嚼能力値および咀嚼効率との間に正の相関が認められた.
    2.咀嚼効率が低いほど咀嚼回数が多い傾向にあった.
    3.咀嚼回数と咀嚼能力値との間には相関は認められなかった.
    4.口唇閉鎖力,咀嚼能力値は男女において有意な差は認められなかった.
    5.口唇閉鎖力,咀嚼能力値は咬合の種類による有意な差は認められなかった.
    本研究より,口唇閉鎖力が咀嚼能力と正の相関があることが示され,口唇閉鎖力が咀嚼能力評価の一指標となり得ることが示唆された.
  • 何 陽介, 岡本 佳三, 馬場 篤子, 本川 渉, 宮崎 光治
    2007 年 45 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    2種類の性状の異なるAPF[液状(L-APF)・ゲル状(G-APF)]をウシエナメル質に作用させ,表面の微細構造の変化,断面の元素分析,アルカリ可溶性のフッ化物の析出量の測定,耐酸性の変化について検討を行った.L-APF群とG-APF群と表面の微細構造を観察した結果,いずれの表面にも球状構造物が析出したが,G-APF群のほうが球状構造物がやや大きいように見受けられた.また,EPMA分析により,フッ素取り込み深度および取り込み量ともにL-APF群が多いという事が明らかとなった.さらにAPF処理後のエナメル質のアルカリ可溶性フッ素量は,L-APF群がG-APF群と比較して有意に多く,耐酸性試験の結果ではL-APF群がコントロール群と比較し,有意に耐酸性が高い事が明らかとなった.以上の結果からL-APFはG-APFと比較し,より高い齲蝕予防効果があることが示唆された.
  • 井下田 繁子, 宮良 美都子, 小野 美紀子, 加藤 仁夫, 前田 隆秀
    2007 年 45 巻 1 号 p. 74-80
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    平成11年4月~平成18年3月末までに当科に来院した12~20歳までの若年者のインプラント治療59名(男子16名,女子43名)の実態調査を行った.
    インプラント希望者の来院主訴は外傷,先天欠如歯,矯正用アンカー希望であった.外傷の原因の多くは交通事故で,来院ルートは院内からの紹介が多かった.歯の欠損の理由が外傷であることから上下顎前歯部の埋入希望が多かった.インプラント治療を希望する理由は健康な歯を削りたくないことであった.補助手術として,ベニアグラフトによる骨移植,非吸収性膜を用いた骨再生誘導法など実施した.メインテナンス・リコールは6か月毎に行っている.
    若年者のインプラント希望者は年々増加が見られ,実際に他施設においても臨床報告はあるが,診断基準に関する報告はない.症例の蓄積が若年者患者のインプラント治療の選択を広げると考えた.
  • 加我 正行, 岩渕 英明, 中村 光一, 橋本 正則, 八若 保孝
    2007 年 45 巻 1 号 p. 81-87
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    操作性に優れたペースト・ペースト練和タイプの光硬化型グラスアイオノマーセメント(フジフィルLC)が開発された.本研究ではその材料の特性を検索するため,ヒト歯質への接着性,フッ素徐放とフッ素のリチャージ効果および蒸留水に浸漬した場合の間接引張強さの変化について従来品(フジIXGP,フジIILC)と比較検討した.
    1.走査型電子顕微鏡による材料とエナメル質の界面観察から,接着界面は全ての材料で緊密な接着を示した.また,象牙質とフジフィルLCの接着界面ではセルフエッチングプライマーの作用による樹脂含浸層様構造が観察された.
    2.フッ素徐放量の測定では,測定開始1日目でフジフィルLCはフジIXGP,フジIILCよりも非常に高い値を示し,約2倍のフッ素の溶出量を示した.2日目,3日目になるに従って急激に減少し,4日目以降では,ごく微量の溶出が認められた.14日目に9000ppmNaF溶液で5分間フッ素をリチャージさせ,24時間後からフッ素溶出量を測定した.リチャージ効果でもフジフィルLCはフジIXGP,フジIILCに比べて約2倍の効果があった.
    3.間接引張強さの測定では,全ての材料で試料作製1日目と30日目を比較し,間接引張強さに有意差が認められなかった.水中浸漬は材質に影響を与えず,長期間のフッ素の徐放はセメント材質を劣化させていなかった.フジフィルLCの間接引張強さはフジIILCよりやや低かった.
  • 小林 聡子, 田中 庄二, 村上 幸生, 南 真紀, 藤澤 盛一郎, 渡部 茂, 安井 利一
    2007 年 45 巻 1 号 p. 88-91
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    過剰歯は,乳歯列と比較して永久歯列においてその頻度が多いことが知られている.また,上顎側切歯部の過剰歯は稀である.著者らは,乳歯列期及び混合歯列期の側切歯部に過剰歯の認められた1例を経験したので,乳歯過剰歯及び上顎側切歯部の過剰歯について文献的考察を加えて報告した.
  • 海原 康孝, 青木 梢, 三宅 奈美, 香西 克之
    2007 年 45 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    11歳8か月女児の下顎右側第二大臼歯の異所萌出および11歳6か月男児の下顎左側第一小臼歯の位置異常の処置に対し,リンガルアーチ,セクショナルワイヤー(ニッケルチタン系.016"×.022")およびクリンパブルフックを用いて咬合誘導を行った.その結果,有効性は以下のような点であった.
    1.リンガルアーチの装着後,患歯にブッカルチューブもしくはブラケットを接着し,セクショナルワイヤーにクリンパブルフックを装着するだけの簡単な装置で行える.
    2.手技が容易であるため,短時間で施術が終了する.
    3.クリンパブルフックの装着によるワイヤーの活性化は,下顎第一大臼歯と第二大臼歯の問のような,歯列弓の後方の操作しにくい部位においても容易に行えた.
    4.本装置の装着期間は1~3か月と比較的短かった.
    5.本装置の装着期間中に患児が苦痛や違和感を訴えることはなかった.
    6.両症例とも後戻りを認めなかった.以上より,この方法は技術的に容易で,患者と術者双方において負担が少なく,予後が良い非常に有効な方法であることが示唆された.
  • 西川 聡美, 原田 桂子, 篠永 ゆかり, 尼寺 理恵, 有田 憲司
    2007 年 45 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    生下時に認められた歯肉の腫瘤を主訴に来院し,臨床的に先天性エプーリスと診断した1例を経験した.
    患児は初診時生後9日齢の女児で,上顎右側前歯部歯肉に,広い茎部を持つ長径12mm,短径8.5mm,歯肉からの高さ7mmの卵円形の腫瘤を認めた.硬度は弾性硬であった.腫瘤面は滑沢で,粘膜色は正常であった.哺乳,呼吸などになんらの障害も認められなかったため,経過観察を行った.生後1か月時には,基底部が16mmと増大したものの,その後縮小傾向を示し,生後6か月時には完全に消失した.生後12か月時において再発は認められず,歯の萌出位置や時期にも異常は認められなかった.
    本症例の結果から,先天性エプーリスは自然治癒する可能性があるため,乳児例においては,哺乳障害等の緊急的症状が認められない限り切除は行わずに自然治癒を期待した経過観察を第一選択処置とすべきであると示唆された.
  • 杉本 あゆみ, 久保山 博子, 安藤 匡子, 高村 伊都子, 井上 貴仁, 満留 昭久, 本川 渉
    2007 年 45 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Hvnnic Mvocloniaは,覚醒から睡眠移行期に突然生じる一瞬の筋の収縮であり,全年齢層健康人の60~70%に譲められる.今回著者らは,Hypnic Myocloniaに伴い,舌咬傷による出血と潰瘍を繰り返した幼児の1例を経験した.患児は,生後10か月から,入眠期に強いmyoclonusとそれに伴う舌咬傷と激しい啼泣を繰り返したため,当科を受診した.上下乳中切歯の切端部削合ならびに,レジン床装置を指示したが,症状の改善が認められないため,精査目的で某大学病院小児科を紹介したものの,検査所見に異常所見は認められなかった.精査の結果,治療を要さない生理的運動異常のHypnic Myocloniaと診断されたため,当科にて,消毒およびレーザー照射を繰り返し行い,自宅でのAZ細粒による含嗽を指示し,経過観察を行った.初診から5か月経過する頃に,睡眠時にタオルを受傷部位の近くに入れて寝るように指示したところ,咬む回数も減少し.同症状は1歳8か月程でほぼ消失した.
    今回著者らが経験した舌咬傷を伴うHypnic Myocloniaは,乳幼児期に一過性に出現し消失することより,脳および口腔機能の成立過程に関連する年齢依存的現象と考えられた.
  • 番匠谷 綾子, 海原 康孝, 中江 寿美, 鈴木 淳司, 香西 克之
    2007 年 45 巻 1 号 p. 109-117
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    鎖骨頭蓋異骨症は,鎖骨の低形成もしくは欠損,頭蓋骨骨化障害,歯の形成異常,低身長などを特徴とする常染色体優性遺伝の骨系統疾患である.
    今回著者らは,永久歯の萌出遅延を主訴に当科を受診し,それが契機となって鎖骨頭蓋異骨症と診断された10歳10か月の二卵性双生児姉妹を経験した.諸検査により次のような姉妹に相似した所見を得た.
    1.鎖骨に両側性の部分欠損を認めた.
    2.GH補充療法を行っているにも関わらず低身長を認めた.
    3.頭蓋骨に大泉門の閉鎖不全,wormian boneが存在した.
    4.多数の乳歯が存在し,残存乳歯の歯根吸収もほとんど認められなかった.
    5.永久歯は姉に6歯,妹に7歯のみの萌出を認め,その他の埋伏永久歯の萌出もかなり遅れていた.
    6.埋伏過剰歯は,姉には上顎3歯,下顎6歯の計9歯,妹には上顎3歯,下顎5歯の計8歯を認めた.
    7.下顎の過成長と下顎骨の前方位による著しい反対咬合を呈していた.
    8.歯列弓は上下顎ともに著しく狭窄していた.
    9.高口蓋で正中口蓋縫合に沿う裂溝を認めた.
  • 角本 法子, 鈴木 淳司, 谷口 芳子, 蔵本 銘子, 光畑 智恵子, 香西 克之
    2007 年 45 巻 1 号 p. 118-124
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    埋伏歯の歯軸方向が咬合平面より上方に歯冠方向を向けている逆生埋伏歯は,従来は抜歯適応と考えられており,とくに歯根の著しい彎曲を伴う逆生埋伏歯は,牽引処置の難症例とされてきた.今回著者らは,上顎永久中切歯の萌出遅延を主訴に広島大学病院小児歯科診療室を紹介受診された逆生埋伏上顎永久切歯の症例2例に対して,積極的な開窓牽引処置を行い良好な結果を得たので報告する.
    症例1:9歳男児,上顎右側側切歯の異所萌出を主訴に近医を受診したところ,エックス線診査により上顎左側中切歯および側切歯の逆生埋伏を指摘され,紹介により当科を受診した.開窓後,リンガルアーチおよびマルチブラケットを用いて3年3か月の牽引処置を行い,上顎左側中切歯を歯列内へ誘導することができた.
    症例2:11歳女児,上顎左側中切歯の萌出遅延を主訴とし,紹介により来院した.エックス線診査により,上顎左側中切歯の逆生埋伏に加え,歯根が極度に彎曲していた.症例1と同様,開窓後,リンガルアーチおよびマルチブラケットを用いた牽引処置を行い,1年11か月後に上顎左側中切歯を歯列内へ誘導することができた.いずれの症例においても,疼痛や根尖性歯周炎などの臨床症状は全くみられず,経過は良好である.
  • 蔵本 銘子, 鈴木 淳司, 大谷 聡子, 角本 法子, 香西 克之
    2007 年 45 巻 1 号 p. 125-133
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    異性同胞(兄,妹)とその母親に出現した部分性無歯症の3症例を経験し,次のような結論を得た.
    症例1(女児8歳3か月)は_??__??__??_,_??__??__??_,症例2(男児,9歳7か月)は_??__??__??_,症例3(母,32歳11か月)は_??__??__??_の先天性欠如が認められた.症例1は乳歯が自然脱落し,後続永久歯を多数欠如しているため,咀嚼機能および審美的機能を改善すべく,部分的床義歯を装着した.また,上顎骨劣成長および歯槽堤の萎縮による反対咬合を呈していた.症例2も症例1と同様多数歯の先天性欠如を有するが,乳歯が残存しているために経過観察中である.これらの部分性無歯症は,臨床所見から外胚葉異形成症が原因であると考えられた.さらに家族歴からは,遺伝様式は外胚葉異形成症に一般的な伴性劣性遺伝ではなく,常染色体劣性遺伝が強く示唆された.
  • 2007 年 45 巻 1 号 p. 134-192
    発行日: 2007/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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