抄録
唇顎口蓋裂は出生約500に1名の割合で発生する先天性奇形のひとつである。裂による顎変形や哺乳障害のみならず,歯の形成異常を認めることが多い。しかし齲蝕罹患性の高さから,これまで唇顎口蓋裂児の歯の形成異常,なかでも乳歯の形成異常に関する報告は少ない。
著者らは,この齲蝕罹患性を低下させるために,唇顎口蓋裂児の乳歯の形成異常の中でも特にエナメル質形成不全に着日し,裂形との関連性や齲蝕有病者率の実態を知り,検討を行う目的で本調査を行った。調査対象は,九州大学病院小児歯科外来で定期管理を行っている乳歯列の唇顎口蓋裂児とした。本調査および分析の結果,以下の所見を得た。
1.顎裂を有する児では,裂の存在する上顎破裂側に乳歯の形成異常が認められることが多い。一方で裂の存在しない反対側,あるいは下顎にも乳歯の形成異常を生じる事が確認された。
2.本調査対象児では,軟口蓋裂単独児において右側の乳歯の形成異常を認めなかった。
3.齲蝕有病者率は歯科疾患実態調査で報告されている健常児のそれと比較して低率であった。
今回の調査から,顎裂児と口蓋裂児ともに乳歯の形成異常の出現を予測し,無歯期から保護者に対する口腔衛生指導を行うこと,また長期にわたる齲蝕予防処置を含む歯科的定期管理を唇顎口蓋裂児に対して行っていくことが大切であると考えられた。