小児歯科学雑誌
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Streptococcus mutansにおけるbacteriocin immunity proteinによる抗生物質感受性メカニズムの解析
松本 道代
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2008 年 46 巻 5 号 p. 501-504

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抄録

口腔内のバイオフィルムは,細胞間のシグナル伝達システムであるクオラムセンシングと呼ばれるシステムのもとで形成される.Streptococcus mutansにおいて,このシステムは,comC遺伝子により産生されるcompetence stimulate peptide(CSP)により調節されていることがわかっている.そこで,comC遺伝子の欠失株を用いて,テトラサイクリン(Tc)に対する感受性を調べたところ,親株と比較して有意に感受性が上昇していた.一方,この実験系にCSPを添加しても,感受性が元の状態に戻ることはなかった.データベース上のS.mutansの遺伝子配列を検討したところ,comC遺伝子の上流にBacteriocin immunity protein(Bip)をコードするbip遺伝子が存在することがわかった.そこで,このbip遺伝子の欠失株を作製し,Tcの感受性を調べたところ,comC欠失変異株と同様にTcへの感受性の上昇が認められた.また,GS5株の培養液中に低濃度のTcを添加すると,bip遺伝子のmRNAの発現が,無添加時と比較して顕著に上昇することがわかった.以上の結果は,S.mutansのBipが抗生物質の取り込みに深く関係しており,菌の抗生物質への感受性に関与していることを示唆している.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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