小児歯科学雑誌
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口唇口蓋裂発症における口蓋成長についての基礎および臨床的研究
佐々木 康成
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2008 年 46 巻 5 号 p. 505-510

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抄録

胎生期からの顎顔面頭蓋の成長発育過程で発揮される成長の潜在能力を解明することは,小児歯科臨床において応用するために重要である.口唇口蓋裂(cleft lip with cleft palate)は,顎顔面頭蓋領域に発現する発生異常の中でも頻度が高く,裂型の中でも重症型であり,小児の成長発育期を通しての歯科的管理が重要であるが,口唇裂に続いて起こる口蓋裂の成長のメカニズムについてはほとんど分かっていない.そこで臨床において,4症例の偏側性唇顎口蓋裂に対する手術前の治療条件の違いが,口唇裂手術時までの口蓋の成長に与える影響を調べた.結果は,装置の使用期間が長い方が,鼻・歯槽の形態のみならず,裂部の閉鎖方向への成長にとっても有効であることが分かった.また,基礎研究においては,口唇裂自然発症系統マウスの胎児期の口蓋棚成長能力について,分子生物学的手法を用いて調べたところ,口唇裂自然発症における口蓋棚細胞の増殖の低下が認められたが,器官培養系においては組織学的に癒合した.こうして分かってきた口蓋の成長の潜在性は,顎顔面頭蓋成長メカニズムの解明につながるのみならず,出生後早期からの治療についての保護者へのカウンセリングやインフォームドコンセントにも有用であると考えている.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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