主催: 一般社団法人 日本体育学会
会議名: 日本体育学会第69回大会
開催地: 徳島大学常三島キャンパス/あわぎんホール
開催日: 2018/08/24 - 2018/08/26
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およそ教育というものは、その時代の要請に応える活動として創造される。今、我々が生きるグローバル化社会では極めて速いスピードで多文化化が進んでいる。自らとは異なる価値観や行動規範を有する他者を理解し、異文化と共生していくことは、言葉で表わすほど容易なことではない。ゆえに、異文化に対する開かれた態度や寛容性は、教育という意図的・計画的な営みによって育まれる必要がある。さらに、多文化が相互依存する現代社会では、我々は常に複文化的な存在として生きることを余儀なくされる。したがって、複文化化の浸透は、個人のアイデンティティや自分軸の確立という教育の根幹に関わる問題と考えねばならない。
グローバル化とは、端的に言えば、世界的な均質化や平均化に伴う没個性の流れであり、それはローカルとの対比によってのみ成立するという逆説的な世界である。日本人が日本人としてのアイデンティティや価値観に気付くことがなければ、グローバルという抽象的な概念に明確な像は付与できない。ここにこそ、体育科教育における武道のレゾンデートルとその役割が存在する。