主催: 一般社団法人 日本体育学会
会議名: 日本体育学会第69回大会
開催地: 徳島大学常三島キャンパス/あわぎんホール
開催日: 2018/08/24 - 2018/08/26
p. 97_3
テニスの打球方向予測を検討した最近の研究(Fukuhara et al., 2017)では、熟練者は対戦相手の近位(体幹等)の身体情報を利用し、その後の遠位(ラケット腕)の動きを予測する可能性を指摘した。本研究ではこうした可能性を検証するため、近位と遠位の相対運動の関係を故意に崩した(打球方向の運動成分を近位と遠位で別々に表現)フォアハンドストローク動作のバーチャル刺激を用いて、熟練者の優れた予測が近位情報を優先的に利用することで実現するのかを検討した。13名のテニス熟練者と12名の初心者は2種類(操作無し、操作あり)のバーチャル刺激を観察し、映像遮蔽時点での打球方向を予測するよう指示された。回答の正解は、ボールの打球方向(遠位情報の出力結果)とした。結果、熟練者の予測精度は近位と遠位の関係性が崩れたときに有意に低下し、特にボールインパクトの時間帯では50%のチャンスを有意に下回った。一方、初心者の予測精度は情報操作によるパフォーマンスの低下は見られなかった。これらの結果は、熟練者の優れた予測は主として近位と遠位の相対運動の知覚に依存するものの、インパクトの最終局面にて近位情報を優先して利用することを示唆する。