主催: 一般社団法人 日本体育学会
会議名: 日本体育学会第70回大会
開催地: 慶應義塾大学日吉キャンパス
開催日: 2019/09/10 - 2019/09/12
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科学技術の進歩は、スポーツする身体の多様化を牽引してきた。身体に合わせたスポーツも数多く産み出されてきたし、スポーツをするための道具も進化を続けている。加えて、近年、スポーツする主体の「多様な身体」を浮き彫りにしてきたことも事実である。例えば、キャスター・セメンヤの陸上競技800m女子種目への参加資格問題(以下「セメンヤ問題」と略す)やマルクス・レームをめぐる義足の取り扱いに関する議論のように、競技スポーツの原則とされてきた性別二元制やルールそのものの限界を示す事例が挙げられる。スポーツにおける「多様な身体」は、これからのスポーツをどこへ導いていくのだろうか。以上の問題意識に基づき、本シンポジウムでは、特に性別二元制を前提とした現在のスポーツ制度が抱える矛盾や問題点について検討する。性別二元制を基本とした競技規則に内在する課題を体育・スポーツ哲学の立場から整理し、解決に向けた道筋の提案を試みる。セメンヤ問題を起点に①身体の「らしさ」、②競技参加をめぐるルール、③スポーツにおけるジェンダーの3つの視点から、「多様な身体」の出現をスポーツの問題としてあらためて問い直してみたい。