日本静脈経腸栄養学会雑誌
Online ISSN : 2189-017x
Print ISSN : 2189-0161
臨床経験
大腿骨頚部骨折患者における周術期譫妄および認知症周辺症状発生に対する栄養関連因子の後方視的検討
田中 智大駒澤 伸泰山村 典子立石 和也斎藤 みどり佐々木 典子藤本 智美南 敏明
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 30 巻 2 号 p. 717-720

詳細
抄録

【目的】大腿骨頚部骨折症例は、高齢者が多く、臥床期間が長いため、周術期譫妄及び認知症周辺症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;以下、BPSDと略)を誘発しやすい1)。当院で大腿骨頚部骨折の手術を受ける高齢者における周術期の栄養摂取状況と栄養状態の推移を検討した。【方法】対象患者は、全身麻酔下に大腿骨頚部骨折手術を実施した70歳以上の高齢者とし、周術期譫妄及び BPSDによる危険行動を起こした群(C群32例)と起こさなかった群(N群23例)に分類して、後方視的に検討を行った。【結果】C群は N群と比較して、年齢(p=0.0003)・認知症の既往を有する割合(p=0.0002)の項目が有意に高値であった。また、入院時から術後7日目までの平均喫食率(p=0.0216)・入院時と比較した術後7日目の血清アルブミン値(p=0.0191)は有意に減少し、入院時と比較した術後7日目の CONUT score(p=0.0002)は有意に上昇した。【結語】周術期譫妄及び BPSDによる危険行動は、術後早期の栄養摂取状況にも影響を及ぼす。そのため、譫妄のハイリスク患者に対する低栄養防止への包括的な予防対策が重要である。

著者関連情報
© 2015 日本静脈経腸栄養学会
前の記事 次の記事
feedback
Top