日本静脈経腸栄養学会雑誌
Online ISSN : 2189-017x
Print ISSN : 2189-0161
特集
がん患者の代謝と栄養
濱口 哲也三木 誓雄
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 30 巻 4 号 p. 911-916

詳細
抄録

がん患者の低栄養、体重減少は通常よく認められる病態であり、不良な予後と関連する。その病態は「がん関連性低栄養」と「がん誘発性低栄養」に分類され、病期の進行とともに両者の混在が顕著となり、相乗的にがん患者の栄養状態を悪化させ、不可逆性の栄養障害がもたらされる。前者が栄養摂取量の低下、特にがんの進行、集学的治療に伴う経口摂取量の低下に起因するのに対し、後者は「がん悪液質」とも表現され、腫瘍による直接的作用、あるいは免疫反応を介しての間接的作用により、体重維持のための栄養維持機構が破綻していることに起因する。両者により骨格筋組織と脂肪組織のエネルギー代謝が異常をきたし、エネルギー消費量が増加することにより、全身のエネルギーバランスは負になる。この病態は、10%程度は臨床病期早期の段階から出現するので、予後や QOLの向上のためには早期に診断し、積極的な栄養療法の介入が必要である。

著者関連情報
© 2015 日本静脈経腸栄養学会
前の記事 次の記事
feedback
Top