抄録
がんの終末期の体重減少をもたらす複合的な代謝異常症候群,悪液質では,あらゆる栄養療法に抵抗性であり,その病態の解明といろいろな治療法が模索されている.原因としては,腫瘍が分泌する各種物質が,食欲低下と代謝異常・亢進を引き起こしている事が判った.そのステージ分類がコンセンサスを得て,栄養はそのステージに応じて行い,経腸栄養が効果的である.積極的な観血的治療や CART等はステージを改善することもある.また,n-3系脂肪酸,ステロイド,カルニチン,グレリン等,悪液質の病態生理に特異的な治療療法が多く開発されつつあるが,現時点ではいずれも限定的なエビデンスにとどまり,ガイドラインで推奨されるには至っていない.