2015 年 30 巻 4 号 p. 972-975
長期間の経空腸的栄養投与の結果銅欠乏性貧血を呈し、ココアの投与で改善を認めた1例を経験した。症例は51歳、女性。脳出血後胃ろう栄養だったが腹膜炎による胃部分切除術で経空腸的栄養管理となった4年後に銅欠乏性貧血を発症した。1日推奨量の銅を含有する栄養剤で管理されていたが吸収不足と考え、経鼻チューブを留置し銅を多く含むココアを十二指腸に投与したところ貧血は改善したが嘔吐のためチューブを抜去し退院となった。その9ヶ月後に再び銅欠乏性貧血となりその際は経空腸的にココアを追加投与し貧血の改善を認め、退院後も続行した。その後ココア投与の一時中断により3回目の銅欠乏性貧血を認め、ココア追加で改善した。消化器外科手術歴のある患者に対し経腸栄養を選択するに当たり胃ろう以外の投与経路に頼らざるを得ない場面がある。そのような際には銅欠乏性貧血をも念頭に置いた管理が必要である。