抄録
【目的】腸内フローラは脂質代謝に関与するとされるが、臨床研究は少ない。今回は、肝癌患者の糞便フローラ・有機酸濃度と血中脂質・有機酸濃度の関連を検討した。【対象及び方法】肝癌患者46名を切除肝病理所見から正常、慢性肝炎 /肝線維症、肝硬変の3群に分け、上記を解析した。【結果】糞便フローラ・有機酸濃度は群間での差を認めなかった。正常肝群ではCandidaと血中リン脂質とは正の、Bifidobacteriumと血中エイコサペンタエン酸 (EPA) および EPA/アラキドン酸 (AA) 比は、負の相関を示した (p < 0.05) 。他方、肝硬変群ではLactobacillusとドコサヘキサエン酸、Candidaと EPA、EPA/AA比が正の相関を示した (p < 0.01) 。以上より、腸内フローラは脂質代謝に作用し、その効果は肝障害の程度によって異なっていた。【結論】腸内フローラは脂質代謝に影響する可能性が示唆された。