2018 年 33 巻 2 号 p. 763-770
【目的】悪性腫瘍はサイトカインを介して栄養障害を生じ、予後を悪化させることが知られている。今回その標的臓器である筋肉に着目し術前骨格筋量と胃癌予後の関係を検討した。【対象及び方法】2009年6月から2016年10月まで胃癌手術症例391例中術前生体インピーダンス法で骨格筋量を測定した202例で生存に及ぼす影響を検討した。【結果】男女別に術前骨格筋指数(skeletal muscle index;以下、SMIと略,kg/m2)を求め、中央値(男性9.2、女性7.7)以上を術前SMI高値群(以下、H群と略)、未満を低値群(以下、L群と略)とした。H群の胃癌補正5年生存率は90.4%、L群は69.8%と有意差を認めた(p<0.01)。病理組織学的進行度Ⅱ+Ⅲ症例で生命予後を悪化させる独立規定因子として術前SMI L群、術後補助化学療法(AC)非完遂があげられた。【結論】悪液質による筋肉崩壊にかかわらず、術前から患者が保有する筋肉量が多ければAC完遂の相乗効果もあって進行度Ⅱ+Ⅲ胃癌の良好な予後が期待された。