2018 年 33 巻 3 号 p. 843-847
炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)やクローン病(Crohn’s disease: CD)では消化管病変の増悪により静脈栄養を選択する場合がある。潰瘍性大腸炎治療の基本は薬物治療であり、静脈栄養は腸管安静や栄養状態改善の意味合いが強い。一方、クローン病治療は薬物療法と栄養療法の二本立てを基本とし、静脈栄養にて炎症の沈静化や粘膜治癒が期待できる。ここでは潰瘍性大腸炎とクローン病における栄養障害の特徴と静脈栄養の位置づけを記載するとともに、実際のエネルギー投与量の設定方法についても概説する。また、静脈栄養が有用であったクローン病の1例を提示し、免疫統御療法全盛の炎症性腸疾患診療における静脈栄養の意義について解説を行う。