日本薬理学雑誌
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実験技術
タバコ煙を用いた慢性閉塞性肺疾患(COPD)の薬効評価モデル
渕上 淳一高橋 真樹
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2006 年 127 巻 3 号 p. 183-189

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抄録
これまでに多くの慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease,以下COPD)の動物モデルが開発されているなかで,喫煙曝露モデルはヒトのCOPDに類似した病変が作製可能なことから,COPDのモデルとして有用性が高い.喫煙曝露あるいはタバコ煙溶液の投与により,以下の3種のモデルを開発した.1.モルモットを用いた喫煙曝露モデル:モルモットにタバコの煙を4週間曝露した.処置群では呼吸機能および肺機能の悪化,好中球およびマクロファージの浸潤が認められた.気管では上皮細胞の過形成により肥厚がみられ,気道病変をもつ病態であった.2.ラットを用いた喫煙曝露モデル:ラットにタバコの煙を3カ月間曝露した.処置群では呼吸機能および肺機能の悪化,動脈血ガスの酸素分圧の低下および二酸化炭素分圧の上昇が認められた.気管粘膜上皮の過形成による肥厚,肺胞壁の破壊による肺気腫状態を示し,気腫性病変および気道病変を併せ持つ病態であった.3.タバコ煙溶液およびリポポリサッカライド誘発モデル:モルモットにタバコ煙溶液ならびにリポポリサッカライド溶液を気管内に直接投与して20日間で作製した.処置群では呼吸機能および肺機能の悪化,炎症性細胞の浸潤が認められた.肺の過膨張および肺胞壁の破壊による肺気腫症状を示した.これら3種のモデルは,COPDの病態メカニズムの解明および新規治療薬の開発に大きく貢献するものと期待される.
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