体力科学
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水泳選手のレジスタンストレーニングが過剰CO2排出量およびスイムパフォーマンスに及ぼす影響
鈴木 康弘高橋 英幸板井 悠二高松 薫
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2000 年 49 巻 3 号 p. 355-363

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抄録
本研究では水泳選手のレジスタンストレーニングによる筋量の増加が過剰CO2排出量およびスイムパフォーマンスに及ぼす影響について検討することであった.被検者は水泳サークルに所属している健康な男子大学生10名で, うち5名をスイムトレーニングのみを行うSWIM群, 残る5名をスイムトレーニングに加えてレジスタンストレーニングを行うCOMBINE群とした.レジスタンストレーニングとしてベンチプレス, ラットプルダウン, バックプレス, レッグプレス, レッグエクステンション, レッグカールを, 週に2回, 8週間行わせた.トレーニング前後にMRI法により大腿部の筋量を測定し, インピーダンス法により身体密度および体脂肪率 (%Fat) を測定した.また, 自転車エルゴメーターによる漸増運動テストを行わせ, 呼気ガス変量, 血中乳酸濃度などを測定した.重炭酸緩衝系を表す指標としてCO2excess, および体重あたりのCO2excessを血中乳酸濃度の増加量 (△La) で除したCO2excess/BW/△Laを用いた.また, スイムパフォーマンスの指標として, トレーニング前のベストタイムおよびトレーニング終了33日後に行われた競技会のタイムを用いた.
結果の要約は次のとおりである.
1.筋量の変化率および身体密度と%Fatの変化率は, COMBINE群 (順に, 11.1±4.5, 0.4±0.1, -11.2±1.9%) が, SWIM群 (3.5±2.5, 0.0±0.4, 0.5±9.6%) に比較して有意に高値を示した.
2.CO2excess, CO2excess/BWおよびCO2excess/BW/△Laの変化率は, COMBINE群 (107.3±60.1, 102.6±56.8, 59.1±37.7%) が, SWIM群 (42.5±10.0, 42.9±10.4, 13.4±22.4%) に比較して有意に高値を示した.3.スイムパフォーマンスのベストタイム更新率は, COMBINE群 (2.2±1.8%) が, SWIM群 (-2.0±3.6%) に比較して有意に高値を示した.
4.筋量の変化率とCO2excess/BW/△Laの変化率との間には有意な相関関係 (r=0.083, ns) は認められなかった.しかし, COMBINE群とSWIM群に分けて検討すると, SWIM群では有意な負の相関関係が認められ (r=-0.993, P<0.01) , COMBINE群においても統計上有意ではなかったものの同様の傾向が認められた (r=-0.744, ns) .
5.筋量の変化率 (r=0.621, P=0.054) およびCO2excess/BW/△Laの変化率 (r=-0.446, ns) が大きかった者ほど, スイムパフォーマンスのベスト更新率が高い傾向が認められた.
上述の結果から, スイムトレーニングに加えてレジスタンストレーニングを行うことによって, 重炭酸緩衝系の貢献度 (CO2excess/BW/△La) は向上するが, その全緩衝に対する割合は, 筋量の増加によって低下する可能性が示唆された.
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© 日本体力医学会
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