抄録
筆者らは1990年より,胃静脈瘤出血に対して,硬化剤としてHistoacryl(N-butyl-2-cyanoacrylate)を用いたEISを行ってきた(Histoacryl法).本論文ではその手技や工夫点を紹介するとともに,緊急EISとしての治療成績を検討した.Histoacryl-Lipiodolの混合比は重合体の局所停滞性とX 線造影性のバランスからHistoacryl濃度は70%に設定した.14日以上の止血成功率は93.7%と良好であった.累積非出血率は3年 91%,5年 91%,10年 66%で,累積生存率は 3年 34%,5年 34%,10年 17%であった. 治療後の手術移行は2例(6.3%)でいずれもIPH症例で脾摘目的でHassab手術を追加した.治療後の死因は主に肝不全死,肝癌死で,出血関連死亡は2例(7.7%)であった.胃静脈瘤出血に対するEISの目的は出血死を回避することである.Histoacryl法は,十分にこの目的を達成できる有効な治療法と考えている.