日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
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15 巻, 3 号
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Editorial
原著
  • 西山 竜, 小川 眞広, 荻原 章史, 安倍 久子, 阿部 真久, 松本 直樹, 中河原 浩史, 廣井 喜一, 大谷 豪, 田中 直英, 森 ...
    2009 年15 巻3 号 p. 221-226
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤の診断においては,血流評価が重要である.一方体外式超音波ドプラ装置は造影検査の導入と装置の改良により,ある程度食道静脈瘤の血流評価が可能であることが分かってきた.そこで我々は,肝細胞癌合併肝硬変50症例に対し,内視鏡所見と造影超音波検査所見の比較を行い,造影超音波検査の有用性を検討した.F因子およびred color signとの比較検討により,造影超音波検査は治療適応の食道静脈瘤を高率に描出できることが確認された.造影超音波検査で下部食道の内腔が強く造影される症例は,治療適応のある食道静脈瘤の約90%に認められた.以上から造影超音波検査は,治療適応のある食道静脈瘤の存在を高率に把握できかつ,低侵襲であるため,臨床上有用であると考える.
  • 楢原 義之, 金沢 秀典, 福田 健, 張本 滉智, 松下 洋子, 城所 秀子, 片倉 玲樹, 厚川 正則, 中塚 雄久, 坂本 長逸
    2009 年15 巻3 号 p. 227-233
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    2004年から2009年までに当科に入院したのべ929例の肝硬変患者のうち,入院時あるいは入院中にクレアチニンが1.5 mg/dl以上を呈した腎障害合併肝硬変患者142例を対象とし,International Ascites Clubの診断基準に基づく1型肝腎症候群症例の実態について検討した.対象中急性腎障害を106例に認め,27例が1型肝腎症候群であった.1型肝腎症候群の平均Child-Pugh scoreは12.4点,総ビリルビン平均値は15.1 mg/dl,クレアチニン平均値は3.22 mg/dlであった.誘因は感染症16例,腹水穿刺5例が多く,その他6例であった.治療としてアルブミン投与21例,terlipressin投与11例,ドパミン投与11例,ノルアドレナリン投与1例,血液濾過透析施行1例などが行われた.Terlipressin以外の通常治療を行った16例中15例は死亡し,平均生存期間は12日であった.1型肝腎症候群は急性腎障害合併肝硬変例の25%にみられ,重度な肝不全を基盤としており,通常治療では予後は極めて不良であった.
臨床研究
  • 大森 薫, 浜辺 功一, 瀬川 誠, 寺井 崇二, 山﨑 隆弘, 為佐 卓夫, 岡 正朗, 坂井田 功
    2009 年15 巻3 号 p. 234-240
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症による脾腫・脾機能亢進症は,結果として汎血球減少を引き起こし,インターフェロン(interferon: IFN) 治療や肝細胞癌 (hepatocellular carcinoma: HCC) に対する化学療法を導入する際の障害となる.我々は2007年6月より, 門脈圧亢進症による脾機能亢進・汎血球減少に対して, PSE(partial splenic embolizatioin: PSE) を積極的に施行している.2007年6月~2008年8月までに施行した10症例について, その治療経験と成績について検討し, 脾臓摘出術の成績と比較した.PSE 1週間後の平均梗塞率は76.8%であり, 平均血小板数は6.5×104/μlからPSE 1カ月後に14.2×104/μlと有意に増加した.脾静脈血流量は10.68 ml/sからPSE後1週間で5.17 ml/sに有意に低下した.門脈血栓などの重篤な合併症は認められなかった.脾臓摘出術症例では,平均観察時期256日の時点で,平均血小板数は4.4×104/μlから18.9×104/μlに有意に増加した.IFNやHCC治療に先行する, 汎血球減少や門脈圧亢進症の治療に際して, PSEは脾臓摘出術とと同様に, 有用な治療であることが示唆された.
  • 成高 義彦, 島川 武, 五十畑 則之, 浅香 晋一, 今野 宗一, 村山 実, 山口 健太郎, 勝部 隆男, 塩澤 俊一, 吉松 和彦, ...
    2009 年15 巻3 号 p. 241-245
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    筆者らは1990年より,胃静脈瘤出血に対して,硬化剤としてHistoacryl(N-butyl-2-cyanoacrylate)を用いたEISを行ってきた(Histoacryl法).本論文ではその手技や工夫点を紹介するとともに,緊急EISとしての治療成績を検討した.Histoacryl-Lipiodolの混合比は重合体の局所停滞性とX 線造影性のバランスからHistoacryl濃度は70%に設定した.14日以上の止血成功率は93.7%と良好であった.累積非出血率は3年 91%,5年 91%,10年 66%で,累積生存率は 3年 34%,5年 34%,10年 17%であった. 治療後の手術移行は2例(6.3%)でいずれもIPH症例で脾摘目的でHassab手術を追加した.治療後の死因は主に肝不全死,肝癌死で,出血関連死亡は2例(7.7%)であった.胃静脈瘤出血に対するEISの目的は出血死を回避することである.Histoacryl法は,十分にこの目的を達成できる有効な治療法と考えている.
症例報告
総説
  • 橋本 直樹
    2009 年15 巻3 号 p. 253-256
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    近年,IFNの治療導入目的にて,血小板数7万以下のC型肝硬変症例に対しては腹腔鏡下脾臓摘除術が普及してきた.腹腔鏡下脾臓摘除術は安全に施行され,血小板減少を有意に改善し,IFN治療の導入継続を可能とした.しかし,脾摘をした症例においては,脾摘後重症感染症を念頭において十分注意しておかねばならない.本疾患はひとたび発症すれば救命はままならない.救命率向上のためにはなによりもまず発症を未然に防ぐべく,脾摘後患者に対して劇症型感染症が起こりうることを十分に認識させ予防策を徹底させることが重要である.そのためには,医療,患者両側面に対しての教育,啓蒙が重要である.本論文では,本症の病態と予防対策について文献的考察を中心に述べる.
テクニカルレポート
  • 幕内 博康
    2009 年15 巻3 号 p. 257-262
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    胃静脈瘤に対する治療法として,内視鏡的硬化療法とバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)が行われている.本稿では胃静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法について述べる.適応および禁忌については食道静脈瘤のそれと同様である.インフォームドコンセント(IC) についても十分に書面と共に行う.手技は胃静脈瘤の最も太いものを直接穿刺し, 血液の逆流を確認したら, 無水エタノール2~3 mlをゆっくり注入し, 続いて生理食塩水2~3 mlを注入しつつHistoacryl (HA)(Histoacryl®)1 Aを注入して抜針する.Histoacryl (HA)は1 mlの生理食塩水を入れた注射器を上向きにして吸引し,直ちに使用する.血液の逆流が確実でなければエタノールの使用は禁忌である.1週間後2回目の硬化療法を行い,更に広く1%エトキシスクレロール(aethoxysklerol, AS)注入を行う.1カ月後に確認の硬化療法を行い,以後6カ月ごとに経過観察と必要な場合には追加治療を行う.1986年から2007年までに67例の治療を行ったが,再出血は緊急例の1例のみで,待期例では1例もなく良好な成績を得ている.胃静脈瘤に対する治療法として,内視鏡的治療法とB-RTOとを対比してそれぞれに対する見解を述べた.
門亢症とIVR
EISかEVLか
門亢症と胃粘膜病変
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