日本門脈圧亢進症学会雑誌
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原著
慢性肝疾患における脾摘術の有用性
田中 淳一朗山本 憲彦杉本 和史白木 克哉桝屋 正浩片山 直之臼井 正信櫻井 洋至伊佐地 秀司竹井 謙之
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2009 年 15 巻 4 号 p. 324-330

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抄録

血小板減少を伴う慢性肝疾患において,脾摘術により血小板数が改善しIFN投与が可能になるとともに,肝機能が改善したとの報告がみられる.我々はIFN導入目的のC型慢性肝疾患17例および肝機能改善目的の11例に対し脾摘術を行った.血小板数,白血球数,好中球数は術後で有意に増加し,IFN導入は全例で可能であった.SVR率は4/17 (23.5%) であり,いずれもserotype 2であった.その他の内訳はBR 1例,Relapse 4例,NR 5例であった.血球減少に伴い治療中止に至った症例は認めなかった.Child-Pughスコア,Alb,T-Bil,PT%,Ch-Eは術前後で有意に改善した.IFN非投与群11例の解析においてもChild-Pughスコア,Alb値とも同様に有意に改善していた.
また,肝再生機序として血小板,造血幹細胞の関与が報告されているが,脾摘術後で末梢血CD34陽性造血幹細胞は有意に増加していた.脾摘術は慢性肝疾患の血小板を上昇させ,IFN治療のコンプライアンスを改善させると同時に肝再生を促進し,長期予後も改善する一つの治療法となり得ると思われる.

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© 2009 日本門脈圧亢進症学会
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