抄録
静脈瘤治療時の心嚢横隔静脈への硬化剤流出は,致死的不整脈を誘発する危険性があり細心の注意を要する.症例は57歳,男性.増大傾向のある胃静脈瘤に対し予防的治療を行うこととなった.瘤の最大径は12 mmであり,静脈瘤の流入路は後胃静脈,主流出路は心嚢横隔静脈であった.組織接着剤併用下の内視鏡的硬化療法の適応であるが,瘤径が大きく,安全に治療するには事前の血流制御が不可欠であった.したがって,血管造影手技でカテーテルを心嚢横隔静脈経由で左下横隔静脈へ挿入し, 金属コイルで塞栓後,内視鏡的に組織接着剤併用下の硬化療法を行った.治療中の合併症はなく,治療後CTでは流入路を含めた静脈瘤の完全な血栓化が確認された.