日本門脈圧亢進症学会雑誌
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16 巻, 3 号
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Editorial
原著:臨床大規模研究
  • 村島 直哉, 渡辺 勲史, 太田 正之, 小原 勝敏, 於保 和彦, 國分 茂博, 中村 健治, 中村 真一, 楢原 義之, 中野 茂, 松 ...
    2010 年16 巻3 号 p. 88-103
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    背景と目的:胃静脈瘤からの出血は致命的であるが,その治療方法に関するエビデンスは日本では確立されていない.日本門脈圧亢進症学会学術委員会は登録表による調査を行い各種治療法の治療効果を検討した.
    方法:出血性胃噴門穹窿部・胃穹窿部静脈瘤全国調査の対象期間は1999年1月から2008年12月31日で,日本門脈圧亢進症学会評議員の所属する81施設に全例登録調査の記載を依頼し,31施設(38.3%)から回収された調査票を分析した.症例数は338例で,初回治療により治療方法を分類し,治療効果を評価し,合併症を集計した.
    結果:組織接着剤 (CAと略す) であるヒストアクリル (83例) あるいはα-シアノアクリレート (50例) に,油性造影剤リピオドールを混合する内視鏡的硬化療法 (CA+リピオドール) が初回治療として最も多く行われ,この治療は,内科的あるいはバルーンチューブによる圧迫などの保存的治療より有意に(P = 0.048)再出血率が低く,肺梗塞などの重大な合併症はなく,合併症による死亡はなかった.さらに,肝硬変294例を対象にした初回治療方法で,胃静脈瘤再出血について単変量解析にて有意な効果が見られたのは,CA+リピオドールとB-RTO (バルーン下逆行性経静脈的塞栓術)であり,保存的治療群を対照とするとCA+リピオドールでは,ハザード比0.214,95% CI 0.056-0.812 (P = 0.024),B-RTOでは,ハザード比0.106,95%CI 0.017-0.659(P = 0.016)であった.年齢・性・Child分類にて補正した胃静脈瘤再出血率の多変量解析では,保存的治療を1とした場合,有意に再出血を抑制できた初回治療方法はCA+リピオドールであり,ハザード比は0.263,95%CI 0.078-0.885 (P = 0.031)であった.また,初回治療後,種類の異なる治療を追加する症例が多く,B-RTO・手術・オレイン酸エタノールアミンによる硬化療法などを2回目以降に追加することで,Child C以外では再出血を抑制することが期待できた.
    結語:CA+リピオドールを用いた内視鏡的硬化療法は,出血性胃噴門穹窿部・胃穹窿部静脈瘤の緊急止血として安全であり最も再出血の少ない治療と考えられた.
特集:食道・胃静脈瘤治療の標準化
原著
  • —CTによる傍食道静脈の評価と早期再発との関連—
    横山 恒, 横山 純二, 河内 裕介, 成澤 林太郎, 青柳 豊
    2010 年16 巻3 号 p. 104-109
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤の内視鏡治療検討に際し,傍食道静脈 (PEV) がCTにて評価可能か,また,評価したPEVの所見と治療後早期再発との関連について検討した.2002年1月から2009年2月までに当科にて内視鏡治療され,経過観察可能であった食道静脈瘤症例42例を対象とした.PEVはDynamic CTで評価し,PEVの発達の程度により発達例と非発達例に分類した.治療6カ月以内の再発例を早期再発例とし,早期再発率を発達例・非発達例で比較した.PEV径の平均は早期再発群2.6 mm,非再発群4.1 mmで,有意差は認めなかったが早期再発群で細い傾向があった.また,早期再発は発達例18例中1例 (6%), 非発達例24例中9例 (38%) と発達例で有意に少なく,EVL群およびEIS群それぞれでも発達例では早期再発が少ない傾向であった.以上より,PEV発達の有無はCTでも評価可能で,内視鏡治療後早期再発の1つの目安になると考えられた.また,PEV発達例では再発率が低いため,より治療簡便なEVLでもEISと同等の治療成績が期待できることが示唆された.
臨床研究
  • —治療の標準化に向けての一考察—
    阿部 航, 國分 茂博, 山形 寿文, 山科 俊平, 内山 明, 大久保 裕直, 宮崎 招久, 渡辺 純夫
    2010 年16 巻3 号 p. 110-114
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    順天堂大学附属練馬病院開院後の2006年4月から2009年3月までに予防的食道静脈瘤硬化療法(Endoscopic Injection Sclerotherapy:EIS) を施行した36症例に対してその背景,および再発例の傾向について検討した.再発例では非再発例に比べ肝予備能が悪く,胃噴門部静脈瘤合併の比率も高い傾向にあり側副血行路の圧や血流量がより増加している可能性が考えられた.またMD-CTでの検討から傍食道静脈の発達が目立たない症例で,食道静脈瘤が再発しやすい傾向にあり,治療後に傍食道静脈による血流のドレナージ効果が得られにくいことなどが一因として推察された.再発例の全6例中4例が退院後早期に飲酒再開したアルコール性肝硬変の症例であり,退院後の禁酒の継続が重要であることが改めて示唆された.
総説
  • 佐藤 隆啓, 山崎 克, 赤池 淳
    2010 年16 巻3 号 p. 115-118
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    内視鏡的超音波カラードプラ法(ECDUS)は食道静脈瘤血流に加え,食道壁外血管や貫通血管を捉えることができる検査法である.食道静脈瘤の血流状況,食道壁外血管の存在の有無やその程度,さらに貫通血管の血流方向診断(供血路であるのか排血路であるのか)などの血行動態診断より効率的かつ安全な治療が可能である.治療前後の血行動態解析から静脈瘤治療の効果判定やその再発予測も可能である.
  • 井上 義博, 藤野 靖久, 小野寺 誠, 菊池 哲, 小豆嶋 立頼, 杉山 幸一, 入澤 篤, 小原 勝敏
    2010 年16 巻3 号 p. 119-126
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    東北地方では昭和63年から食道・胃静脈瘤の治療に関するシンポジウムを毎年開催し,その中で最近注目されているのが,治療の標準化である.第16回日本門脈圧亢進症学会総会のシンポジウムのテーマが静脈瘤治療の標準化であったため,この機会に東北地方で行われている静脈瘤治療をまとめた.主な内容は1)治療適応を明確化し,臓器障害の目安を示す (EISでは総ビリルビン4 mg未満,クレアチニン2 mg未満,血小板2万/μl以上等を適応とする),2) 予防治療と緊急治療を分け,それぞれの治療指針を示す,3) 系統的な治療ができる施設とそうでない施設を階層化する,4) 超音波内視鏡や3DCTによる門脈血行動態の評価を確立し,実際の治療に反映させる (壁在傍食道静脈,並走傍食道静脈,貫通血管を把握し,血行動態に合わせた治療を選択する),5) 治療後の経過観察計画の目安を示す,6) インフォームド・コンセントを重視し,副作用を明記する,などである.
臨床研究
  • 谷合 信彦, 吉田 寛, 真々田 裕宏, 峯田 章, 川野 陽一, 田尻 孝, 内田 英二
    2010 年16 巻3 号 p. 127-133
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    部分脾動脈塞栓術 (PSE) は,門脈圧亢進症における食道胃静脈瘤治療,汎血球減少,肝機能の改善などに有効な治療法である.PSEが肝細胞癌 (HCC) 治療においても有効かを検討した.PSE群,脾摘群の血小板数,肝機能の推移,肝切除例の生存率,合併症を比較検討した.術前の血小板はPSE群,脾摘群で4.8×104/mm3,4.9×104/mm3で術後2週目は9.9×104/mm3,19.4×104/mm3と術前値より有意に上昇した.肝機能はPSE群では術後低下したが,脾摘群は上昇した.凝固能は両群ともに上昇した.PSE群の3年生存率は56.3%であり,当科のChild BのHCC切除例の3年生存率49.3%と有意な差はなかった.合併症ではPSE群は重篤なものはなかったが,脾摘群は高率に門脈血栓症を合併した.PSEは脾摘に比較し手技も簡便で,合併症も少なく,HCCの手術適応拡大,予後改善に有用である.
症例報告
総説
  • 土居 忠
    2010 年16 巻3 号 p. 143-147
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症の結果として惹起される脾腫大は脾機能亢進症による汎血球減少や脾循環亢進状態をもたらすのみならず,肝病変の増悪・進展とも関連することが明らかになりつつある.部分的脾動脈塞栓術(PSE)は脾の生理的機能を温存しながら脾腫大による脾機能亢進症や肝脾相関の不均衡を是正しうる治療手段として門脈圧亢進症患者に広く行われているが,十分検討されていない課題も多く残されている.その1つに肝不全進行例に対するPSEの問題があり,その有効性とともに安全性についての検討が必要である.本稿では肝不全進行例に対するPSEの有効性と問題点について我々の経験をふまえて述べる.
  • 藤野 靖久, 井上 義博, 小野寺 誠, 菊池 哲, 遠藤 重厚, 鈴木 一幸
    2010 年16 巻3 号 p. 148-151
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    2000年から2009年に当科で治療した消化管静脈瘤破裂症例のうち,治療後1カ月以内に死亡した30例を対象とし,その臨床像から更なる救命率改善への可能性について検討した.原因疾患はC型肝硬変14例,アルコール性10例,B型3例,ほかであった.受診時までに心肺停止となった症例が4例含まれていた.発生部位は食道15例,胃12例,直腸3例で,胃では噴門部の比較的細い静脈瘤からの出血が目立った.内視鏡的硬化療法(EIS)は18例中16例で,内視鏡的静脈瘤結紮術は10例中8例で止血に成功していた.出血死はアルコール性肝硬変の飲酒継続例に多かった.肝不全死した症例は受診時すでにEISの適応のない症例であった.出血死の防止のためには,予防治療とともに精神科と連携した禁酒治療が重要と思われた.肝不全死を防ぐためにも予防治療は重要であるが,適応は慎重に検討すべきと考えられた.
門亢症と栄養管理
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