抄録
部分脾動脈塞栓術 (PSE) は,門脈圧亢進症における食道胃静脈瘤治療,汎血球減少,肝機能の改善などに有効な治療法である.PSEが肝細胞癌 (HCC) 治療においても有効かを検討した.PSE群,脾摘群の血小板数,肝機能の推移,肝切除例の生存率,合併症を比較検討した.術前の血小板はPSE群,脾摘群で4.8×104/mm3,4.9×104/mm3で術後2週目は9.9×104/mm3,19.4×104/mm3と術前値より有意に上昇した.肝機能はPSE群では術後低下したが,脾摘群は上昇した.凝固能は両群ともに上昇した.PSE群の3年生存率は56.3%であり,当科のChild BのHCC切除例の3年生存率49.3%と有意な差はなかった.合併症ではPSE群は重篤なものはなかったが,脾摘群は高率に門脈血栓症を合併した.PSEは脾摘に比較し手技も簡便で,合併症も少なく,HCCの手術適応拡大,予後改善に有用である.