抄録
生体肝移植における門脈血行異常に関してその原因,治療,予後を検討した.術前,様々な血行異常のみられた症例が93例中11例(12%)存在したが,全例門脈端端吻合による再建が可能であった.術後血行異常は11例(12%)にみられ,吻合部狭窄などの機械的要因によるものはそれを是正することで良好な結果を得られたが,拒絶反応による肝実質障害に伴うものの予後は不良であった.生体肝移植における門脈血行異常は,適切な術前評価および手術手技の工夫により肝移植の禁忌とはならないが,周術期管理,特に画像による術前評価,合併症の早期発見・治療と拒絶反応の厳重な管理が肝要である.