日本門脈圧亢進症学会雑誌
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臨床研究
肝硬変に合併した腹部ヘルニアに対するメッシュを用いた根治術の安全性と有用性の検討
富川 盛雅赤星 朋比古堤 敬文金城 直長尾 吉泰川中 博文前原 喜彦橋爪 誠
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2011 年 17 巻 2 号 p. 86-90

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抄録

肝硬変に合併した腹部ヘルニア16例に対し,メッシュを用いた根治術(腹膜外アプローチ腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(TEP)9例,メッシュプラグ法1例,腹腔鏡補助下オンレイメッシュ根治術5例,腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア手術1例)を行った.また,同時期の非肝硬変症例の外鼠径ヘルニアに対し施行したTEPの手術時間,術中出血量,術後入院期間,合併症,再発の有無につき比較検討した.平均手術時間は129分,平均出血量は56gであった.術後合併症として皮下血腫を3例,術後出血を1例,腹水増悪を1例に認めたが,いずれも保存的治療により軽快した.Seromaを1例に認め,穿刺吸引にて軽快した.16例の術後平均観察期間は688日であり,腹水破裂,メッシュ感染,ヘルニア再発はいずれも認められなかった.肝硬変に合併した腹部ヘルニアに対するメッシュを用いた根治術は,非肝硬変症例の外鼠径ヘルニアに対するTEPに比べると,手術時間が有意に長く,術中出血量が有意に多かったが,Child-PughクラスC症例も含めて安全に施行でき,難治性腹水症例に対しても有用であった.末期肝硬変に合併した腹部ヘルニアといえども可能ならばメッシュを用いて待期・予防的に根治術を施行するべきである.

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© 2011 日本門脈圧亢進症学会
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