日本門脈圧亢進症学会雑誌
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症例報告
B-RTOにより肝予備能の著明な改善を認め肝癌治療を継続し得た1例
菊池 志乃鍋島 紀滋谷口 尚範中村 武史
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2011 年 17 巻 4 号 p. 165-168

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抄録

症例は67歳男性.10数年前よりC型慢性肝疾患としてフォローされていた.数年前より肝細胞癌を発症し,肝動脈塞栓術による治療-再発を繰り返していたが,2年前より脳症が出現し,肝癌治療は行わずに対症療法を行っていたが,連日脳症のため救急搬送や救急受診を繰り返すようになったため,入院となった.CTに拡張・蛇行した脾腎短絡が認められ,上腸間膜静脈由来の血流が脾腎静脈系短絡へ流出していることが脳症の主要な因子と考えられた.まず,親バルーンを脾腎短絡合流部で拡張し,マイクロカテーテルをシャント内へ挿入,5%EOI 60mlを子バルーンの拡張下に3回に分けて注入しEOIの停留を確認した.16時間後の造影にて良好な塞栓効果を確認した.治療後肝性脳症の症状は速やかに消失し,肝予備能もChild-Pugh Aに改善したため,多発肝癌に対しリピオドール加のIA-callの動注治療を複数回行い,良好な腫瘍縮小効果を得た.

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© 2011 日本門脈圧亢進症学会
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