2011 年 17 巻 4 号 p. 153-158
症例は57歳女性.C型肝硬変症,肝性脳症の診断で当科入院.各種画像検査にて胃静脈瘤(Lg-cf, F2, RC-)と,巨大な胃─腎短絡路を認めた.内科的治療では肝性脳症のコントロールが不良であり,肝性脳症改善を目的に,バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を施行した.B-RTO後速やかに肝性脳症は消失し,肝予備能の改善も認めた.B-RTO後に食道静脈瘤が増悪し,内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)で予防治療を行った.B-RTO施行2日後に腰背部痛が出現,膵酵素の上昇,造影CTにて膵の軽度腫大と膵周囲の脂肪織濃度の上昇,軽度の液体貯留を認め,急性膵炎と診断した.膵炎は軽症で,内科的治療で速やかに改善した.今までに同様の報告例はなく,本症例が,B-RTO後に急性膵炎を発症した初めての症例報告である.