2011 年 17 巻 4 号 p. 169-173
脾臓摘出術は,古くはBanti病に対する治療法として,また食道静脈瘤治療法の一つとして報告されたが,近年の内視鏡的治療の出現により手術療法自体の適応が少なくなってきた.しかし,内視鏡外科手術の普及とsealing vessel等の新しい機器の発達により腹腔鏡下脾臓摘出術が安全・確実に施行できるようになった.特に,脾臓摘出術により長期に血小板数が維持できることや,肝機能の改善,肝線維化抑制,肝再生にも影響があることが報告されるようになり,脾臓摘出術の適応が見直されてきた.現在では,内視鏡的治療抵抗性の難治性食道胃静脈瘤治療目的のほか,IFN治療導入目的や肝癌治療目的など慢性肝疾患患者に対しても積極的に施行されるようになってきた.今後は,さらに分子標的治療や幹細胞を用いた肝再生療法との集学的治療の一環としてその役割が期待される.