抄録
内科的治療に抵抗性の肝性脳症例に対してバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を行った14例を対象とし,その有用性を後方視的に検討した.B-RTOによる門脈圧上昇を緩和する目的で,部分脾動脈塞栓術(PSE)を10例で併施した.対象シャント血管は胃腎7例,脾腎5例,mesocaval 3例,奇静脈系1例,傍臍静脈1例で,14例中12例(85.7%)で完全なシャント閉塞に成功した.閉塞成功例で脳症は改善し,アンモニア値,昏睡度いずれも有意な改善がみられた.血清アルブミン値,ICG試験,Child-Pughスコアなど肝予備能も有意な改善がみられた.顕性脳症の再発は不完全閉塞例を除けば,肝病変進展により長期間を経て2例にみられたのみであった.今後は治療効果に関連する因子の探索と,治療後に新たに生じてくるシャント経路などについての観察も行うべき課題と考えている.