日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
Print ISSN : 1344-8447
ISSN-L : 1344-8447
18 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 大洞 昭博, 小島 孝雄, 宮脇 喜一郎
    2012 年 18 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    内視鏡的静脈瘤結紮術(以下,EVL)は簡便な方法であるが,比較的再発も多い.当院にて初回EVL後,現在に至るまでに10年以上経過した食道静脈瘤症例について検討した.当院において2001年3月までにEVLを行った症例237名のうち10年以上生存中の症例は18例(7.6%).そのうち,当院にて全経過が判明している16例について検討を行った.初回治療時平均年齢61.9歳.男性5名,女性11名.初回緊急例2例,予防施行例14例.その治療歴は,10例はEVL単独で,残りの6例は他治療併用例であった.経過中8名が死亡し,その中で消化管出血死は1名のみであった.血流評価の上,食道静脈瘤硬化療法(以下,EIS)等の治療法を選択することが最良とは思われるが,煩雑な検査や手技ではないEVL治療を繰り返すことでも,出血予防としての治療効果が期待でき,長期生存につながると考えられた.
  • 中野 茂, 竹内 基, 松井 哲平, 高山 竜司, 金山 政洋, 藤塚 宜功, 五十嵐 良典, 住野 泰清
    2012 年 18 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    背景:出血量の多い食道静脈瘤症例では,出血点を同定して止血することは困難な場合もある.このような出血例に対して,効果的な止血方法を検討する.
    対象と方法:2004年5月1日から2010年4月30日までに当院で経験した食道静脈瘤出血例で,噴出性出血を確認した65例を対象とした.止血には内視鏡的静脈瘤結紮術(Endoscopic varicealligation:EVL)を選択し,出血点を同定して結紮した群を出血同定群,出血点が同定できず食道胃接合部かららせん状に結紮したらせん群に分類しretorospectiveに検討した.
    結果:出血同定群は55例,らせん結紮群は10例だった.出血同定群の2例,らせん結紮群の1例で止血が不能でS-B tubeを挿入した.両群間の背景,止血率,再出血率,生存率に有意差は認めなかった.
    結語:出血量が多く視野の確保が困難な場合も,静脈瘤の上流側から結紮を加えることで止血することが可能である.手技は容易で合併症も少なく,治療成績も出血源が同定できた場合と同等であることから,出血点が不明な場合に試みる方法と考えられる.
  • 和栗 暢生, 林 雅博, 佐藤 宗広, 薛 徹, 池野 嘉信, 佐藤 里映, 荒生 祥尚, 河久 順志, 濱 勇, 大杉 香織, 横尾 健, ...
    2012 年 18 巻 2 号 p. 111-118
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    内科的治療に抵抗性の肝性脳症例に対してバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を行った14例を対象とし,その有用性を後方視的に検討した.B-RTOによる門脈圧上昇を緩和する目的で,部分脾動脈塞栓術(PSE)を10例で併施した.対象シャント血管は胃腎7例,脾腎5例,mesocaval 3例,奇静脈系1例,傍臍静脈1例で,14例中12例(85.7%)で完全なシャント閉塞に成功した.閉塞成功例で脳症は改善し,アンモニア値,昏睡度いずれも有意な改善がみられた.血清アルブミン値,ICG試験,Child-Pughスコアなど肝予備能も有意な改善がみられた.顕性脳症の再発は不完全閉塞例を除けば,肝病変進展により長期間を経て2例にみられたのみであった.今後は治療効果に関連する因子の探索と,治療後に新たに生じてくるシャント経路などについての観察も行うべき課題と考えている.
臨床研究
  • 林 星舟, 今村 潤, 木村 公則, 佐伯 俊一
    2012 年 18 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    血管造影にて下行性側副血行路の形成過程とその血行動態の変化を観察し得た10症例について解析した.1)3例で径8~14mm大の脾(胃)腎短絡路が4年8か月以内に形成され,うち2例で上腸間膜静脈血流の盗流現象を認め,全例で肝合成能の低下を認めた.2)短絡路を有するも上腸間膜静脈血流の盗流現象を認めなかった4例のうち,3例で2年5か月以内に上腸間膜静脈血流の盗流現象と短絡路の拡張,門脈本幹径の狭小化を認め,うち2例で肝合成能の低下を認めた.3)短絡路を有し,かつ上腸間膜静脈血流の盗流現象を認めた3症例では,その後さらに門脈本幹径の狭小化を認め,経年的に肝萎縮,肝不全を招いた.すなわち,1)下行性側副血行路が短期間に形成・拡張する症例が存在すること,2)短絡路の拡張に伴い上腸間膜静脈血流の盗流現象と門脈本幹径の狭小化,肝合成能の低下が生じ得ること,3)上腸間膜静脈血流の盗流現象を伴う短絡路の存在は,その後経年的に肝萎縮と肝不全を引き起こし得ることが明らかとなった.
  • 久保川 賢, 赤星 和也, 仲間 直崇, 小森 圭司, 柏原 由美, 岩尾 梨沙, 本村 廉明, 板場 壮一, 中村 和彦
    2012 年 18 巻 2 号 p. 127-134
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    当院で経験した十二指腸静脈瘤症例17例について,経過観察群と治療群とに分けてretrospectiveに臨床像および治療方法・成績,予後などにつき検討を行った.男性12例,女性5例で,平均年齢は62歳.基礎疾患はウイルス性肝硬変6例,アルコール性肝硬変7例,非B非C肝硬変2例,特発性門脈圧亢進症(IPH)1例,肝外門脈閉塞症(EHO)1例.局在部位は,球部2例,下行脚13例,水平脚2例で,形態はF1 10例,F2 5例,F3 2例,うち3例でびらんないし潰瘍を伴い,3例でRCサインを伴っていた.無治療で経過観察した12例と待期的ないし予防的に治療を行った5例で背景因子を比較したところ,治療群でF2,F3と太い静脈瘤が多く,超音波内視鏡(EUS)による静脈瘤径も太い傾向にあった.また,治療例ではCA(cyanoacrylate系薬剤)および5% EOI(Ethanolamine oleate with iopamidol)の併用による硬化療法が有用であり,複数回の治療を要した1例を除き,再発・再出血を認めなかった.2例に治療後一過性の門脈血栓症を認めたが,いずれも保存的に軽快した.
症例報告
  • 櫻井 克宣, 大平 雅一, 木村 健二郎, 天野 良亮, 久保 尚士, 田中 浩明, 六車 一哉, 山田 靖哉, 石川 哲郎, 平川 弘聖
    2012 年 18 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    脾静脈閉塞に起因する胃静脈瘤を来した4例に対して脾摘を行い良好な結果が得られたので報告する.患者の平均年齢は55.8歳(53~60歳),すべて男性であった.症状は消化管出血が3例,無症状が1例であった.脾静脈閉塞の原因は膵炎2例,膵癌1例,脾悪性リンパ腫1例であった.4例とも脾摘が行われ,術後の上部消化管内視鏡検査では全例胃静脈瘤は消失し再発は認めておらず,脾摘は有用な治療であると考えられた.
  • 矢田 晋作, 神納 敏夫, 小谷 美香
    2012 年 18 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.C型肝硬変にて生体肝移植が施行されたが,術後早期に門脈狭窄を来した.門脈圧亢進症状が認められ,バルーン拡張術が繰り返し行われたが完全閉塞を来したため,難渋していた.経過観察となった2年後に大量下血を来し,門脈内の血栓の進展を認めたため,当科紹介となった.経皮経肝的に肝内門脈にアクセスし,ガイドワイヤーで閉塞部を通過することができたため,閉塞部に対してバルーン拡張後,ステント留置を行い,後拡張も追加した.術後,門脈血流は良好となり,2年経過した現在でも,再下血は認められていない.
総説
  • 佐藤 隆啓, 木村 睦海, 荒川 智宏, 桑田 靖昭, 中島 知明, 小関 至, 大村 卓味, 狩野 吉康, 豊田 成司
    2012 年 18 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症における胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)は消化管出血や貧血の原因となる病態である.胃前庭部に散在する発赤,血管模様が特徴で,放射状に走行するwatermelon stomachと称されるtypeとdiffusely spread typeに分けられる.病態は粘膜固有層における毛細血管の拡張と増生で,機械的刺激により容易に出血するため慢性貧血の原因となる.最近は内視鏡治療が主体でアルゴンプラズマ凝固療法は安全で有用性が高いと報告されているが,再発頻度が高いのが問題である.難治性GAVEに内視鏡的結紮術を試みた報告もあり,考慮すべき治療法である.
feedback
Top