2012 年 18 巻 4 号 p. 173-176
今回我々は出血をきたした門脈圧亢進症性胃症(portal hypertensive gastropathy:PHG)症例に対する部分的脾動脈塞栓術(partial splenic arterial embolization:PSE)の有用性について検討した.severe PHGからの出血例に対してPSEを行った5例を対象とした.全例とも出血は,門脈側副血行路に対する治療後1年以内にみられた.PSEによる脾臓の塞栓率は60~88%,平均76%で,肝静脈圧較差(hepatic venous pressure gradient:HVPG)はPSE後に57 mmH2O減少し,出血は全例でコントロールされた.PSE施行6か月後にはPHGの改善がみられ1年後も効果は持続した.食道静脈瘤の改善も2例にみとめられた.HbはPSE6か月後に,PLTは1か月後と6か月後に有意な増加をみとめた.発熱,腹痛が全例でみられ,Grade 3の腹痛が1例でみられた.PSEはsevere PHGからの出血例に対して,有用な治療法と考えられた.