日本門脈圧亢進症学会雑誌
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臨床研究
当施設における手術適応肝細胞癌合併胃静脈瘤に対するB-RTOの考察
宮澤 祥一松岡 俊一水谷 卓伊藤 潔上村 慎也阿部 真久松本 直樹田村 彰教中村 仁美楡井 和重森山 光彦山崎 慎太郎檜垣 時夫高山 忠利
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2014 年 20 巻 2 号 p. 136-141

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抄録
手術適応肝細胞癌(hepatocellular carcinoma : HCC)に合併した胃静脈瘤に対するバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration : B-RTO)の適応についての明確な指針は確立していない. 手術後に食道胃静脈瘤の悪化する例があるため, 出血危険度の高い胃静脈瘤には術前にB-RTOが必要であると考えられる. 手術適応HCC合併胃静脈瘤に対してB-RTOを施行した症例を2009年5月から2013年5月までに5例経験した. 胃静脈瘤の形態は全例でF3であった. B-RTO後の造影CT(computerized tomography)で, 全例において胃静脈瘤および胃腎短絡路の消失もしくは縮小を確認できた. また, 肝予備能悪化例はなく, B-RTOから平均47.8(19~79)日で手術可能であった. 手術前に上部消化管内視鏡(gastric fiber scope : GS)を行い, 胃静脈瘤に全例で形態的改善を認めた. 食道静脈瘤の新出は1例で認めたが, 硬化療法の適応はなかった. 全例で周術期に静脈瘤出血の合併は認めなかった. 術前B-RTOは手術までの著しい期間延長もなく有用であると考えられた.
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© 2014 日本門脈圧亢進症学会
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