日本門脈圧亢進症学会雑誌
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20 巻, 2 号
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Editorial
総説
  • 山上 卓士, 吉松 梨香, 三浦 寛司, 粟井 和夫
    2014 年20 巻2 号 p. 108-111
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    Portopulmonary venous anastomosis(PPVA)は門脈圧亢進症により発達する側副路の一つである. 出現頻度は1~33%と報告により差がある. right-to-leftシャントであるため, 胃食道静脈瘤の治療の際に静脈瘤内に注入された塞栓物質や硬化剤がPPVAを通過するとsystemic embolizationが生じる可能性があり, 術前に十分検索しておく必要がある. バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術の際にPPVAを認めた場合, systemic embolizationの予防策として, ①PPVAを塞栓する, ②PPVAの分岐部を超えた胃静脈瘤側までバルーンカテーテルを進めてから硬化剤を注入する. などの対処法がある.
  • —31年間の治療実績, 経験から—
    岩瀬 弘明
    2014 年20 巻2 号 p. 112-121
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に対しては, 硬化剤を静脈瘤からすだれ状血管網, 供血路まで注入する内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy : EIS)は止血効果, 静脈瘤消失に最も有効な内視鏡的治療法である. 硬化剤を供血路まで注入することが重要であり, 硬化剤のシャント流出また口側流出静脈瘤は食道胃接合部近傍静脈瘤穿刺により注入可能となる. 内視鏡的静脈瘤結紮術(Endoscopic variceal ligation : EVL)は簡便で合併症が少なく重症例, 活動性出血時には適切な治療法であるが, 再出血リスクが高いため食道静脈瘤の安全な管理には供血路まで治療できるEISの追加が必要である. 当院における過去31年間の食道静脈瘤出血367例の内視鏡的治療の緊急止血率は95.6%であり, 5年以上生存例には再出血は稀であった. 1年, 10年, 20年生存率はそれぞれ75.5%, 8.0%, 4.3%であり, 死因は肝不全51.8%, 肝がん20.9%, 静脈瘤出血死7.9%であった. 多変量解析の検討では肝がん, Child-Pugh分類が生命予後と有意に相関した. EISを主とした内視鏡的治療は出血死を防ぐのに有用であったが, 長期生存を期待するには積極的な肝がん治療, 肝機能改善のため薬物治療, 栄養生活指導, 症例によっては脾摘, 肝移植など集学的治療が必要であった.
原著
  • 森田 進, 松本 晶博, 梅村 武司, 柴田 壮一郎, 市川 雪, 木村 岳史, 城下 智, 小松 通治, 田中 榮司
    2014 年20 巻2 号 p. 122-125
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    部分的脾塞栓術(PSE)・脾摘後にインターフェロン(IFN)治療を受けたC型肝硬変症例の予後をコホート研究にて検討した.経過観察開始直後からPSE・脾摘群が対照群より生存率が高い傾向にあり,3年目でPSE・脾摘群生存率 = 93%,対照群生存率 = 66%(p = 0.034),4年目ではPSE・脾摘群 = 93%,対照群 = 61%(p = 0.016),と統計学的に有意の差をみとめた.IFN治療の効果別にみた生存率の比較では,SVR群では,PSE・脾摘群と対照群は共に予後良好で両群間に有意差は認めなかった.非SVR群では,PSE・脾摘群は対照群に比較して予後良好であったが有意差は認められなかった.観察開始から4年目の生存率に寄与する因子としては,開始時のアルブミン値(p < 0.001),肝細胞癌の有無(p = 0.008),PSE・脾摘施行の有無(p = 0.031)が有意であった.
    C型肝硬変例において,PSE・脾摘はIFN治療の適応を拡大させるばかりでなく,肝硬変の予後を改善する可能性が示唆された.
  • —Xenon CTによる検討—
    重福 隆太, 高橋 秀明, 吉田 良仁, 野口 陽平, 初谷 守朗, 池田 裕喜, 松永 光太郎, 松本 伸行, 奥瀬 千晃, 佐瀬 茂, ...
    2014 年20 巻2 号 p. 126-135
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    【目的】Xenon CT(Xe-CT)を用い食道胃静脈瘤に対するEISを施行した群とB-RTOを施行した群の治療前後の肝血流量を比較し血行動態の違いを検討した.
    【対象・方法】EIS 45例(男/女=27/18例), B-RTO 13例(男/女=9/4例)を対象とした. Xe-CTは, 治療前と治療1週後で門脈, 肝動脈組織血流量(PVTBF, HATBF ; ml/100 ml/min)を測定し, 両者の和である総肝血流量THTBF, PVTBF/HATBF(P/A)ratioを算出しEIS群とB-RTO群の両者を治療前後で比較した.
    【結果】EIS群の治療前 ; 治療後の肝血流量は, PVTBF 28.2±9.0 ; 32.3±9.2(P=0.002), HATBF 22.6±14.6 ; 19.9±8.6, THTBF 50.8±17.5 ; 52.2±14.7 ml/100 ml/min, P/A ratio 1.6±0.7 ; 1.9±0.9(P=0.039)であった. B-RTO群の治療前 ; 治療後の肝血流量は, PVTBF 28.5±6.0 ; 39.0±16.7, HATBF 28.2±17.1 ; 25.6±12.6, P/A ratio 1.3±0.6 ; 1.6±0.4(P=0.029)であった. 全ての肝血流量において, 両治療の前および後で有意差を認めなった.
    【結論】塞栓術前後でPVTBFとP/A ratioは増加し, 動脈血流優位(動脈肝)の改善を認めた.
臨床研究
  • 宮澤 祥一, 松岡 俊一, 水谷 卓, 伊藤 潔, 上村 慎也, 阿部 真久, 松本 直樹, 田村 彰教, 中村 仁美, 楡井 和重, 森山 ...
    2014 年20 巻2 号 p. 136-141
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    手術適応肝細胞癌(hepatocellular carcinoma : HCC)に合併した胃静脈瘤に対するバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration : B-RTO)の適応についての明確な指針は確立していない. 手術後に食道胃静脈瘤の悪化する例があるため, 出血危険度の高い胃静脈瘤には術前にB-RTOが必要であると考えられる. 手術適応HCC合併胃静脈瘤に対してB-RTOを施行した症例を2009年5月から2013年5月までに5例経験した. 胃静脈瘤の形態は全例でF3であった. B-RTO後の造影CT(computerized tomography)で, 全例において胃静脈瘤および胃腎短絡路の消失もしくは縮小を確認できた. また, 肝予備能悪化例はなく, B-RTOから平均47.8(19~79)日で手術可能であった. 手術前に上部消化管内視鏡(gastric fiber scope : GS)を行い, 胃静脈瘤に全例で形態的改善を認めた. 食道静脈瘤の新出は1例で認めたが, 硬化療法の適応はなかった. 全例で周術期に静脈瘤出血の合併は認めなかった. 術前B-RTOは手術までの著しい期間延長もなく有用であると考えられた.
症例報告
  • 奥本 和夫, 水野 恵, 勝見 智大, 冨田 恭子, 佐藤 智佳子, 西瀬 雄子, 渡辺 久剛, 齋藤 貴史, 上野 義之
    2014 年20 巻2 号 p. 142-146
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は9歳女児, 主訴は黒色便, 気分不良. 胆道閉鎖症にて出生後に葛西の手術施行. 5歳時より食道静脈瘤を指摘され内視鏡検査を定期的に行っていた. 2012年3月, 血小板減少進行し, 脾臓摘出術施行(重量492 g). 同年10月に気分不良, 黒色便出現, 近医にて, ヘモグロビン値が4.7 g/dlと貧血の進行を認め, 食道静脈瘤出血が疑われ, 当院を受診した. 上部消化管内視鏡検査を行ったところ, Lm, F2, Cw, RC1, Lg-cの食道静脈瘤を認め, エタノーラミンオレイト(Ethanolamine Oleate : EO)を用いて内視鏡的硬化療法を行い, 左胃静脈まで硬化剤を注入した. 以後, 貧血は改善した. 脾摘後に胃静脈瘤が消失する報告はあるが, 食道静脈瘤が悪化したという報告はない. しかし, 脾摘により血行動態の変化が生じ食道静脈瘤が増大した可能性がある. 脾摘6か月後に食道静脈出血を来たした胆道閉鎖症術後の1小児例を経験した. 脾摘後も食道静脈瘤の経過観察には注意を要すると考えられた.
テクニカルレポート
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