日本門脈圧亢進症学会雑誌
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症例報告
脾摘6か月後に食道静脈瘤出血を来した胆道閉鎖症術後の1小児例
奥本 和夫水野 恵勝見 智大冨田 恭子佐藤 智佳子西瀬 雄子渡辺 久剛齋藤 貴史上野 義之
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2014 年 20 巻 2 号 p. 142-146

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抄録
症例は9歳女児, 主訴は黒色便, 気分不良. 胆道閉鎖症にて出生後に葛西の手術施行. 5歳時より食道静脈瘤を指摘され内視鏡検査を定期的に行っていた. 2012年3月, 血小板減少進行し, 脾臓摘出術施行(重量492 g). 同年10月に気分不良, 黒色便出現, 近医にて, ヘモグロビン値が4.7 g/dlと貧血の進行を認め, 食道静脈瘤出血が疑われ, 当院を受診した. 上部消化管内視鏡検査を行ったところ, Lm, F2, Cw, RC1, Lg-cの食道静脈瘤を認め, エタノーラミンオレイト(Ethanolamine Oleate : EO)を用いて内視鏡的硬化療法を行い, 左胃静脈まで硬化剤を注入した. 以後, 貧血は改善した. 脾摘後に胃静脈瘤が消失する報告はあるが, 食道静脈瘤が悪化したという報告はない. しかし, 脾摘により血行動態の変化が生じ食道静脈瘤が増大した可能性がある. 脾摘6か月後に食道静脈出血を来たした胆道閉鎖症術後の1小児例を経験した. 脾摘後も食道静脈瘤の経過観察には注意を要すると考えられた.
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© 2014 日本門脈圧亢進症学会
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