2015 年 21 巻 4 号 p. 229-237
症例は72歳の男性で,膵頭部癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,Child変法再建術を施行し,術後膵液漏を認めたものの軽快退院した.術後8か月目に下血にて緊急入院し,画像精査・血管造影の結果,再発所見はなく,門脈本幹,脾静脈・門脈合流部の高度狭窄,肝外側副血行路の発達を認め,挙上空腸からの消化管出血と診断し,経皮経肝門脈ステント留置術を施行した.しかしステント留置4日後に大量下血をきたし,大腸全域にわたりtelangiectasiaを認めた.経皮経肝門脈造影では,側副血行路を介して肝内門脈が造影され,ステント内血栓閉塞の所見であった.門脈ステント再留置術とバルーン拡張を施行し,門脈本幹は良好に造影され,側副血行路は造影されなくなった.良性肝外門脈閉塞にはステント留置は有効であるものの,早期ステント内血栓閉塞に注意が必要である.