日本門脈圧亢進症学会雑誌
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総説
脾内肝細胞移植:どのようにして正常な肝細胞が脾臓に生着し,増殖したのか?
水戸 廸郎草野 満夫
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2016 年 22 巻 2 号 p. 119-129

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抄録

類まれな再生力に基づき肝臓の広範囲切除や部分肝移植という術式が成り立っている.慢性肝不全となる肝硬変で結合織に取り囲まれた肝細胞をフリーにし,分裂増殖しうる環境・脾臓に移植し新しく肝組織を再構築し,第二の肝臓で機能補助を意図した研究論文である.ラットでの基礎実験ではわずか106個単位の同系肝細胞の移植で,脾臓は移植後1年半には2/3以上が再構築肝組織に置換される.脾臓の肝臓化に我々は世界で初めて成功した.この肝化脾臓は組織学,電顕学的観察でほぼ正常の構造を呈し,物質的代謝機能,特にアルブミンの合成は再構築量に応じて機能を発現した.しかしサルでの自家肝細胞脾臓内移植の成果を得て,臨床実験を試みたが長期生着例は得られなかった.種々の基礎実験で多くの新知見を得たが,本法が治療手段になるにあたっての未解決の課題にも言及し,我々の成果が「自分の細胞で自身の病気を改善する」肝臓の再生医療への他山の石となることを願っている.

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© 2016 日本門脈圧亢進症学会
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