日本門脈圧亢進症学会雑誌
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原著
大腸癌術後補助化学療法FOLFOXによる脾臓容積の変化の検討
岩井 拓磨山田 岳史吉田 寛菅 隼人進士 誠一谷合 信彦真々田 裕宏内田 英二
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2016 年 22 巻 2 号 p. 146-151

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抄録

【背景】Oxaliplatinを術後補助化学療法に用いることで大腸癌Stage III症例の再発率を低下させるが,本薬剤の有害事象の一つに肝類洞障害がある.類洞障害は再発や転移をきたした場合に治療のリスクが上昇する.類洞障害の診断は肝生検により行うが,類洞障害の程度が脾臓容積と有意に相関することが報告された.本研究ではFOLFOX投与前後の脾臓容積を測定することで同療法による肝類洞障害を推測した.【方法】対象は2011年1月から2013年12月に根治切除後に術後補助化学療法としてFOLFOXを施行した大腸癌Stage III, Stage II high risk群32例.VINCENTTMを用いてFOLFOX開始前,終了時,終了1年後の脾臓容積を測定した.【結果】化学療法終了時の脾臓容積は治療前と比較し有意に増加し(p=0.0003),また終了1年後の容積は終了時と比較し有意に減少した(p=0.0076).化学療法終了時には68.7%の症例で脾臓容積は増加し,1年経過後も34.3%の症例では,脾臓容積が増加したままであった.【結語】FOLFOXにより約2/3の症例で脾容積増加をきたし,このうちの半数では容積増加が1年以上継続する.脾容積増加の遷延は類洞障害の継続を示唆するため,再発時の治療の際に注意を要する.

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© 2016 日本門脈圧亢進症学会
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