日本門脈圧亢進症学会雑誌
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原著
難治性肝性腹水に対する腹水濾過濃縮再静注療法(CART)の現状
関 志帆子後藤 亨
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2016 年 22 巻 2 号 p. 139-145

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抄録

腹水濾過濃縮再静注療法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy;CART)は,腹水中の自己蛋白質を再静注し血漿蛋白質低下を軽減することで,難治性腹水に対する効果が期待されている.今回,難治性肝性腹水を合併しCARTを施行した肝硬変25例について,初期効果と長期効果の関係を検討した.CART3回もしくは導入後3か月を初期治療期間と定義し,その期間終了後次の施行までの日数が30日未満を初期効果不応群,30日以上を反応群と分類し,長期効果を比較した.長期効果は,観察期間内の最終CARTから直近でCART未施行期間が30日以上維持できた例を改善,それ以外を不良と判定した.結果は,初期効果反応群10例,不応群15例であった.長期効果は,反応群で改善10例,不応群で改善3例,不良12例と反応群が有意に優れていた(p<0.01).難治性腹水に対するCARTは,特に初期効果が良好であれば長期的な腹水コントロールが可能か推測できると考えられた.

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© 2016 日本門脈圧亢進症学会
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