日本門脈圧亢進症学会雑誌
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臨床研究
当科における肝硬変合併門脈血栓症に対する抗凝固療法の治療成績
佐藤 俊輔村田 礼人廿楽 裕徳玄田 拓哉
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2018 年 24 巻 4 号 p. 231-236

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抄録

門脈血栓症は肝硬変の重要な合併症のひとつで抗凝固療法が行われるが,治療方法や成績については不明な点も多い.そこでアンチトロンビン・製剤とダナパロイドナトリウムによる抗凝固療法を行った肝硬変合併門脈血栓症25例を対象に,門脈血栓症の現状と治療成績を検討した.背景肝はアルコール性肝硬変(8例)や,Child-Pugh Cの肝予備能不良例(14例)が多かった.診断に至った契機は腹水貯留が12例と最多だったが,無症状も5例に認められた.治療成績は完全消失6例,縮小10例,無効9例で,完全消失と縮小を合わせた有効率は64.0%だった.治療効果別に患者背景を比較すると,無効例に肝予備能不良例が多かった.治療効果別に予後を検討した結果,有意差は認めないものの3か月生存率が有効群81.3%に対し無効群44.4%と著しく不良だった.門脈血栓症の治療成績は比較的良好だったが,肝予備能の影響を受けることから早期に治療すべきと考えられた.

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© 2018 日本門脈圧亢進症学会
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