日本門脈圧亢進症学会雑誌
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総説
生体肝移植後予後より考える肝硬変合併肺病変の病態理解
高木 章乃夫安中 哲也大山 淳史足立 卓哉川野 誠司八木 孝仁岡田 裕之
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2019 年 25 巻 2 号 p. 123-127

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抄録

肝硬変においては肺内血管拡張による肝肺症候群や肺毛細血管狭窄による門脈肺高血圧などの肺病変が合併し得る.肝肺症候群は,肝硬変に伴う臓器血管拡張の部分症で,頻度も比較的高く,理解しやすいが,肺毛細血管の線維化・狭窄を伴う肺高血圧は稀で,病態理解も不十分である.肝移植後の予後の検討で病態を説明されることが多く,肝肺症候群は肝移植により完治しうるが,肺高血圧は右室系から肝静脈への圧負荷がかかるため相対的禁忌とされている.本邦では欧米と異なり生体肝移植が中心で,移植グラフトが小さく,より詳細な評価が必要である.我々の施設で,生体肝移植前の非代償期肝硬変で軽症肝肺症候群・軽症肺高血圧の病態・予後を検討したところ,肺動脈圧を反映するとされる三尖弁逆流圧較差(TRPG)は実測肺動脈圧と相関しない一方で,高値は移植後の予後不良に相関した.実測肺動脈圧高値例は,TRPGも高値の状態と,肝肺症候群を合併し,右室系への圧負荷がシャントに抜けてTRPGは上昇しない状態に分類され,後者の移植後予後は良好であった.肝硬変において肝臓に対する圧負荷の評価は実測肺動脈圧ではなく,TRPGの方が有用と考えられた.本論文では,門脈肺高血圧と肝肺症候群について概説する.

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© 2019 日本門脈圧亢進症学会
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