2019 年 25 巻 2 号 p. 128-131
門脈圧亢進症による食道静脈瘤や胃静脈瘤に対する治療としてHassab手術や脾臓摘出術が提唱されているが,特に肝硬変(LC)症例の予後についての報告は少ない.2005年から2017年までに当科で門脈圧亢進症に対して脾臓摘出術を施行した17人の患者について後方視的に検討を行った.LC症例(n=14)と特発性門脈圧亢進症(IPH)症例(n=3)とで,それぞれ血液生化学的検査の変化を比較した.またChild-Pugh分類AのLC症例で脾臓摘出術の有無での予後の比較を行った.LC症例,IPH症例ともに脾臓摘出術後に白血球および血小板の増加を認めたが,肝機能の改善は認めず,むしろアルブミン値の低下を認めた.Child-Pugh分類Aの症例で脾臓摘出術の有無で生存率に有意差はなかった(平均生存期間38.6±36.4か月vs 26.4±22か月).IPHによる門脈圧亢進症に対しての脾臓摘出術は有用であるが,Child-Pugh分類AのLC患者では脾臓摘出術は予後を改善しない可能性がある.