日本門脈圧亢進症学会雑誌
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25 巻, 2 号
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特別寄稿
Editorial
総説
  • 高木 章乃夫, 安中 哲也, 大山 淳史, 足立 卓哉, 川野 誠司, 八木 孝仁, 岡田 裕之
    2019 年 25 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
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    肝硬変においては肺内血管拡張による肝肺症候群や肺毛細血管狭窄による門脈肺高血圧などの肺病変が合併し得る.肝肺症候群は,肝硬変に伴う臓器血管拡張の部分症で,頻度も比較的高く,理解しやすいが,肺毛細血管の線維化・狭窄を伴う肺高血圧は稀で,病態理解も不十分である.肝移植後の予後の検討で病態を説明されることが多く,肝肺症候群は肝移植により完治しうるが,肺高血圧は右室系から肝静脈への圧負荷がかかるため相対的禁忌とされている.本邦では欧米と異なり生体肝移植が中心で,移植グラフトが小さく,より詳細な評価が必要である.我々の施設で,生体肝移植前の非代償期肝硬変で軽症肝肺症候群・軽症肺高血圧の病態・予後を検討したところ,肺動脈圧を反映するとされる三尖弁逆流圧較差(TRPG)は実測肺動脈圧と相関しない一方で,高値は移植後の予後不良に相関した.実測肺動脈圧高値例は,TRPGも高値の状態と,肝肺症候群を合併し,右室系への圧負荷がシャントに抜けてTRPGは上昇しない状態に分類され,後者の移植後予後は良好であった.肝硬変において肝臓に対する圧負荷の評価は実測肺動脈圧ではなく,TRPGの方が有用と考えられた.本論文では,門脈肺高血圧と肝肺症候群について概説する.

原著
  • 三好 敬之, 高槻 光寿, 日高 匡章, 曽山 明彦, 濱田 隆志, 江口 晋
    2019 年 25 巻 2 号 p. 128-131
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    門脈圧亢進症による食道静脈瘤や胃静脈瘤に対する治療としてHassab手術や脾臓摘出術が提唱されているが,特に肝硬変(LC)症例の予後についての報告は少ない.2005年から2017年までに当科で門脈圧亢進症に対して脾臓摘出術を施行した17人の患者について後方視的に検討を行った.LC症例(n=14)と特発性門脈圧亢進症(IPH)症例(n=3)とで,それぞれ血液生化学的検査の変化を比較した.またChild-Pugh分類AのLC症例で脾臓摘出術の有無での予後の比較を行った.LC症例,IPH症例ともに脾臓摘出術後に白血球および血小板の増加を認めたが,肝機能の改善は認めず,むしろアルブミン値の低下を認めた.Child-Pugh分類Aの症例で脾臓摘出術の有無で生存率に有意差はなかった(平均生存期間38.6±36.4か月vs 26.4±22か月).IPHによる門脈圧亢進症に対しての脾臓摘出術は有用であるが,Child-Pugh分類AのLC患者では脾臓摘出術は予後を改善しない可能性がある.

臨床研究
  • 佐藤 慎哉, 辻 祐樹, 下里 直隆, 高谷 広章, 瓦谷 英人, 北出 光輝, 吉治 仁志
    2019 年 25 巻 2 号 p. 132-135
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    【目的】腹水貯留を伴う非代償性肝硬変患者においてサルコペニア合併がその生命予後や臨床経過に与える影響について明らかにする.【方法】2013年1月から2015年12月までに,腹水コントロール目的で当院に初回入院した肝硬変患者49例を,サルコペニア非合併(N)群(24例)とサルコペニア合併(S)群(25例)に分類し.生存期間中央値と肝疾患関連事象発現までの期間について検討した.【結果】S群の生存期間(98±44日)はN群(406±133日)よりも有意に短期間であった(p=0.02).さらに,N群の肝関連事象発生までの期間(277±162日)はS群(28±6日)よりも有意に長期間であった(p=0.001).【結論】腹水貯留を伴う非代償性肝硬変患者において,サルコペニアが合併すると肝関連事象発生までの期間は短くなり,生命予後も不良となることが明らかになった.

症例報告
  • 濱窪 亮平, 張本 滉智, 金沢 秀典, 岩下 愛, 葉山 惟信, 金子 恵子, 厚川 正則, 川本 智章, 岩切 勝彦
    2019 年 25 巻 2 号 p. 136-141
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    71歳,女性.60歳時にC型肝硬変,食道静脈瘤,腹水,肝性脳症,肝動脈門脈短絡(A-Pシャント)と診断されたが食道静脈瘤硬化療法(EIS)と利尿剤投与などにより病状は安定していた.70歳時に再度EIS施行したところ腹水が増悪し,その後,利尿剤不耐性の難治性腹水となり当科へ入院となった(Child-Pughスコア12点).TAEによるA-Pシャント塞栓術を施行したところ,肝静脈圧較差は26 mmHgから19 mmHgへ低下し,腹水穿刺の頻度も週に1度程度へ改善したが難治性腹水からの離脱には至らなかった.しかし,A-Pシャント塞栓術後,門脈本幹血流は求肝性となり肝性脳症が制御可能となった.そこでA-Pシャント塞栓術の38日後にTIPSを行った.TIPSにより,門脈大循環圧較差は19 mmHgから6 mmHgへ低下し,腹水は著明に改善し,腹水穿刺・利尿剤ともに中止可能となった.その後肝機能は徐々に改善し,TIPS 8か月後には腹水は完全消失し,Child-Pughスコアは6点まで改善した.76歳時にDAA(LDV/SOF)を導入したところウイルスは持続陰性化し,78歳となった現在でも健在である.

  • 三原 史規, 竹村 信行, 伊藤 橋司, 國土 典宏
    2019 年 25 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    Vp4の高度な門脈侵襲を伴う肝細胞癌は,予後不良で標準治療は存在せず,切除を含めた様々な治療が,症例に応じて試みられているのが現状である.一方再発肝細胞癌に対する再肝切除,再々肝切除の有効性が報告されているが,切除を繰り返すたびに癒着を来すため,その肝門操作は難しくなる.今回Vp4の門脈侵襲を伴う再々発肝細胞癌に対する腫瘍栓摘出術を経験した.強固な肝門の癒着により門脈の確保に難渋したが,総胆管をいったん切離し門脈本幹から左枝を露出することにより,腫瘍栓を安全に摘出することが可能であった.切離した胆管は端々吻合にて再吻合を行ったが,術後吻合部狭窄を認めたため,内視鏡的ステント留置を行い軽快退院した.術後4か月目に残肝再発が確認されたため,レンバチニブを導入したが術後9か月で原病死した.標準治療のないVp4の再発肝癌に対する手技的選択肢として,本例は貴重な経験と考えられ報告した.

  • 大越 麻理奈, 石川 達
    2019 年 25 巻 2 号 p. 148-152
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
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    67歳女性.C型肝炎ウイルスによる肝硬変の診断にてA病院通院.外来経過中,肝性脳症が増悪し,内服加療にてもコントロール不良となり,血小板低値も認めた.脾腫,脾動脈瘤を伴うChild-Pugh class C肝性脳症C型肝硬変の診断で当院紹介.部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization:PSE)を先行し,その後に肝性脳症の主たる原因は門脈から左胃静脈,上大静脈への短絡路によるものと診断し,同門脈-大循環短絡路に経皮経肝的門脈側副血行路塞栓術(Percutaneous Transhepatic Obliteration:PTO)を施行した.PTO後に肝性脳症は改善,肝予備能はChild-Pugh class Aに改善し,IFN free直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAA)導入し,その後Sustained Viral Response(SVR)が得られ,肝予備能もさらに改善した.

  • 宮﨑 昌典, 山本 修平, 嶋吉 章紀, 甲斐 優吾, 堀江 真以, 岩橋  潔, 村田真衣子 , 柄川 悟志, 尾下 正秀
    2019 年 25 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    アルコール性肝硬変Child-Bのため当院通院中の65歳男性.肝内胆管拡張を伴う高度の黄疸を認めたため同日ERCPを行った.総胆管結石を認めESTを施行したが,出血が多く一期的結石除去は断念し,10Frのプラスチックステントを留置し減黄を図った.第7病日にERCPを再施行し結石除去を行いIDUSにて残石のないことを確認しENBDチューブを留置した.しかし留置直後から出血が続くため,チューブステントを再留置した.その後も貧血が徐々に進行し,第11病日にERCP再検しステントの傍からの出血が確認できた.圧迫止血目的にファーター乳頭部に金属ステントを留置したところ,逆に大出血を来した.改めて画像を再確認したところ,造影CT画像では門脈本幹は血栓で閉塞し胆管表面に血管走行が確認できた.IDUS画像では胆管に接して血管が数条走行していた.また,経鼻胆管チューブ造影画像では総胆管周囲の側副血行路の造影が疑われた.以上より,胆管炎による胆管壁の脆弱化に結石除去の機械的操作が加わり胆管表面の静脈瘤の出血を誘発したと考えられた.中部胆管に金属ステントを追加留置し止血を得たが,肝不全が進行し第43病日に死亡した.死後剖検を行ったが,ステント挿入部の静脈瘤の確認は困難であった.胆管静脈瘤は稀で,本症例の如く緊急で処置を要する場合の治療法選択は困難であるが,肝硬変がある場合にはその存在を念頭において治療に臨まなければならない.

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