2019 年 25 巻 2 号 p. 136-141
71歳,女性.60歳時にC型肝硬変,食道静脈瘤,腹水,肝性脳症,肝動脈門脈短絡(A-Pシャント)と診断されたが食道静脈瘤硬化療法(EIS)と利尿剤投与などにより病状は安定していた.70歳時に再度EIS施行したところ腹水が増悪し,その後,利尿剤不耐性の難治性腹水となり当科へ入院となった(Child-Pughスコア12点).TAEによるA-Pシャント塞栓術を施行したところ,肝静脈圧較差は26 mmHgから19 mmHgへ低下し,腹水穿刺の頻度も週に1度程度へ改善したが難治性腹水からの離脱には至らなかった.しかし,A-Pシャント塞栓術後,門脈本幹血流は求肝性となり肝性脳症が制御可能となった.そこでA-Pシャント塞栓術の38日後にTIPSを行った.TIPSにより,門脈大循環圧較差は19 mmHgから6 mmHgへ低下し,腹水は著明に改善し,腹水穿刺・利尿剤ともに中止可能となった.その後肝機能は徐々に改善し,TIPS 8か月後には腹水は完全消失し,Child-Pughスコアは6点まで改善した.76歳時にDAA(LDV/SOF)を導入したところウイルスは持続陰性化し,78歳となった現在でも健在である.