2020 年 26 巻 1 号 p. 35-40
【背景・目的】原発性胆汁性胆管炎(PBC)における食道胃静脈瘤の評価は重要である.一方,門脈圧亢進症性胃症(PHG)も門脈圧亢進により発症し,無症候性PBCにも合併するが意義は不明で,それを明らかにするため検討を行った.【対象】PBCで食道胃静脈瘤,PHGを継続し評価しえた112例を調査した.【結果】PHG合併は,PBC診断時21例,観察期間中の出現例6例の計27例(21.9%)であった.PHG合併別では生命予後には有意な差異はなかったが,症候性への移行はPHG合併群が有意に早かった.症候性移行時点での食道胃静脈瘤合併はPHG合併群,非合併群でそれぞれ74%,40%であり,PHG合併群は門脈圧亢進症型への移行が多かった.また,PHG合併は症候性移行の独立した危険因子であった.【結語】PHGの合併は,症候性への進展,門脈圧亢進症型へ移行する可能性が高く,慎重な経過観察が必要である.