2020 年 26 巻 1 号 p. 41-46
症例は63歳,男性.腹部膨満感のため前医を受診したところ腹水を指摘された.利尿剤を投与しながら,精査を予定していたが,翌月に吐血したため,当院へ紹介となった.同日,緊急で上部消化管内視鏡を施行したところ,食道胃接合部の静脈瘤から噴出性出血を認めたため,内視鏡的静脈瘤結紮術を施行した.その後に施行した造影CTにて腹水および肝動脈-門脈短絡路(A-Pシャント)を認めた.腹水は漏出性でありトルバプタンなどを投与するもコントロール不良であった.肝生検組織はほぼ正常肝であった.A-Pシャントに伴う門脈圧亢進症が静脈瘤や腹水の原因と考え,エタノールによるシャント塞栓術を計4回施行した.シャント閉塞術により,食道静脈瘤および腹水は消失した.今回A-Pシャントに伴う門脈圧亢進症が原因で静脈瘤出血,難治性腹水を来し,治療により改善を認めた症例を経験した.非常に示唆に富む症例であり報告する.